稲賀繁美

稲賀繁美について

稲賀繁美（いなが しげみ、1957年 - ）は、比較文学、比較文化、文化交流史を専門とする日本の研究者です。モダニズム、ジャポニスム、オリエンタリズム、異文化コミュニケーションといったキーワードを軸に、幅広い研究活動を行っています。国際日本文化研究センターおよび総合研究大学院大学の名誉教授であり、現在は京都精華大学の教授兼国際文化学部長を務めています。東京都で生まれ、広島県で育ちました。

学歴

東京大学教養学部教養学科を卒業後、同大学院比較文学比較文化専攻に進みました。その後、フランス政府給費留学生としてパリ第1大学に留学し、1988年にパリ第7大学にて新課程統一博士号を取得しました。

職歴

稲賀氏は、日本国内の様々な大学や研究機関で教鞭を執ってきました。1988年から1990年まで東京大学助手、1990年から1997年まで三重大学人文学部助教授を務めました。その後、1997年から2004年まで国際日本文化研究センター助教授、2005年から2021年まで同センターおよび総合研究大学院大学教授として活躍しました。2013年から2015年には総合研究大学院大学・文化科学研究科長も務めています。また、2016年からは放送大学講座担当客員教授、2016年から2018年には国際日本文化研究センター副所長も務めました。2021年からは京都精華大学教授として、後進の育成に尽力しています。

海外での研究活動も活発に行っており、1998年から1999年にはコロンビア大学とパリ第3大学の客員研究員、2000年から2001年にはハイデルベルク大学大学院とザールブリュッケン大学大学院で在外研究員として活動しました。さらに、2001年には北京外国語大学日本研究中心、2002年にはサラマンカ大学、2008年にはサンパウロ大学大学院、2013年にはジャワハルー・ネルー大学で在外派遣（国際交流基金ほか）として研究を行いました。また、2006年から2007年にはワシントンDC議会図書館クルーギー・センターの研究員も務めました。

研究活動

稲賀繁美氏は、比較文学、比較文化、文化交流史の分野で、特にモダニズム、ジャポニスム、オリエンタリズム、異文化コミュニケーションに関する研究で知られています。西洋と東洋の文化交流を多角的に分析し、美術史、思想史、文化史を横断する研究を展開しています。その研究は、歴史的視点と現代的視点を組み合わせた独自の分析手法が特徴です。

主要著作

稲賀繁美氏は、数多くの著作を発表しています。単著としては、『絵画の黄昏：エドゥアール・マネ没後の闘争』（1997）、『絵画の東方：オリエンタリズムからジャポニスムへ』（1999）、『絵画の臨界：近代東アジア美術史の桎梏と命運』（2014）、『接触造形論：触れあう魂、紡がれる形』（2016）、『日本美術史の近代とその外部』（2018）、『矢代幸雄：美術家は時空を超えて』（2022）、『美／藝術 日本の近代思想を読みなおす 3』（2024）などがあります。これらの著作は、美術史、文化史における重要な議論を提起し、学術界に大きな影響を与えています。

編著としては、『異文化理解の倫理にむけて』（2000）、『伝統工藝再考：京のうちそと―過去発掘・現状分析・将来展望』（2006）、『東洋意識 夢想と現実のあいだ 1887-1953』（2012）、『海賊史観からみた世界史の再構築　交易と情報流通の現在を問い直す』（2017）、『映しと移ろい 文化伝播の器と蝕変の実相』（2019）、『蜘蛛の巣上の無明 インターネット時代の身心知の刷新にむけて』（2023）などがあります。これらの編著は、多岐にわたるテーマを扱い、学際的な視点から文化交流や社会現象を考察しています。

また、外国語での出版も多数あり、Crossing Cultural Borders—Beyond Reciprocal Anthropology (1999), Traditional Japanese Arts and Crafts in the 21st Century (2005), Questioning Oriental Aesthetics and Thinking (2010)などがあります。これらの著作は、国際的な研究コミュニティにおいても高く評価されています。

翻訳書としては、レイチェル・バーンズ編『ドガ』（1991）、ピエール・ブルデュー『話すということ 言語的交換のエコノミー』（1993）などがあります。

受賞歴

稲賀繁美氏は、その学術的業績に対して数多くの賞を受賞しています。ジャポネズリー研究学会賞（1980）、渋沢・クローデル賞LVJ特別賞（1997）、サントリー学芸賞（1997）、倫雅[[美術奨励賞]]（1997）、和辻哲郎文化賞（2000）、フランス建築アカデミー出版賞（2014）などが挙げられます。これらの受賞歴は、稲賀氏の研究が学術界だけでなく、社会全体においても高く評価されていることを示しています。

その他の活動

稲賀氏は、合氣道4段の有資格者でもあり、文化研究だけでなく、武道にも造詣が深い人物です。また、国際比較文学会理事（2009-2013）を務めるなど、国際的な学術活動にも積極的に関わっています。

まとめ

稲賀繁美氏は、比較文学、比較文化、文化交流史において、国際的に活躍する研究者です。その研究は、美術史、思想史、文化史を横断し、学術界に多大な影響を与え続けています。また、教育者としても、次世代の研究者の育成に尽力しており、その学術的貢献は今後も注目されるでしょう。

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