大嶺政寛

大嶺政寛は、1910年（明治43年）2月10日に沖縄県で生まれ、1987年（昭和62年）12月20日に77歳で亡くなった洋画家です。戦前・戦後の沖縄において、その独特の色彩感覚と温かみのある筆致で、沖縄の原風景を描き続けました。

生い立ちと初期の活動

那覇市久米町で生まれた大嶺は、沖縄県立第二中学校（現在の沖縄県立那覇高等学校）在学中に、比嘉景常の指導を受け、西洋画を志すようになりました。1929年（昭和4年）に同校を卒業後、沖縄県師範学校本科二部に進み、1930年（昭和5年）に卒業。その後、那覇尋常小学校や那覇市立商業学校（現在の沖縄県立那覇商業高等学校）、沖縄県立第一高等女学校などで教鞭を執る傍ら、創作活動に励みました。

1933年（昭和8年）には、第10回春陽会展に入選を果たし、その才能を認められます。1939年（昭和14年）には文展にも入選し、1943年（昭和18年）には、第6回文部省美術展（新文展）で『首里風景』が入選するなど、戦前からその画力は高く評価されていました。

戦後の活動と沖縄美術界への貢献

戦後、大嶺は沖縄の美術界の発展に尽力しました。1949年（昭和24年）には、第1回沖縄美術展において絵画彫刻部門の審査委員を務め、同年には沖縄美術連盟の幹事に就任しました。1951年（昭和26年）には、琉球列島米国民政府により第2回国民指導員としてアメリカ合衆国へ派遣され、海外の美術事情を視察する機会を得ました。1953年（昭和28年）には、春陽会会員に推挙され、1955年（昭和30年）には名渡山愛順とともに1955年協会を結成し、沖縄の美術運動を牽引しました。1956年（昭和31年）には沖縄美術家連盟を結成し、その第1回展を開催しました。大嶺は、沖縄の美術家たちの交流と発展に大きく貢献しました。1967年（昭和42年）には、第1回沖縄タイムス芸術選賞を受賞し、その功績が改めて称えられました。彼の作品は、沖縄の風土や文化を色濃く反映しており、多くの人々に愛されています。

作風と評価

大嶺の作品は、沖縄の赤瓦の家々や、自然の風景を温かいまなざしで描いたものが多く、「赤瓦屋根の政寛」と称されるほどです。彼の描く風景は、単なる写実ではなく、沖縄の持つ独特の空気感や情感を捉えたものであり、多くの人々に故郷を思い起こさせる力を持っています。また、沖縄民芸協会会長を務め、沖縄の伝統文化の継承にも力を注ぎました。

大嶺政寛は、沖縄の美術史において重要な役割を果たした人物の一人であり、彼の作品は現在も多くの人々に愛され続けています。

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