大川町 (香川県)

大川町（おおかわちょう）

かつて香川県の東部に存在し、大川郡に属していた町です。2002年（平成14年）4月1日に周辺の町と合併してさぬき市が誕生するまで、その歴史を刻みました。現在のさぬき市のうち、大川町田面、大川町富田中、大川町富田西、大川町富田東、大川町南川といった大字名にその名残を見ることができます。

地理と気候

香川県の東側に位置し、大川郡のほぼ中央部に広がっていました。県都である高松市の中心部からは、東へ約25キロメートル離れた場所にあります。町の面積は34.54平方キロメートルで、東西に約6.4キロメートル、南北に約8.4キロメートルの広がりを持っています。地形的には、讃岐山脈が南側に連なり、湿った空気を遮る影響から、年間の降水量は全国平均よりも少ない傾向が見られました。1975年から2002年までの平均年間降水量は約1107.5mmでした。年間を通じての平均気温は約20度程度と比較的温暖ですが、特に10月には降水量が多くなる傾向がありました。

歴史

古くは「難波の里」とも称された歴史を持つ地域です。近現代においては、昭和の大合併の流れの中で、1955年（昭和30年）4月15日に大川郡富田村と松尾村が合併し、「大川村」として新たに発足しました。その後、さらなる発展を経て、1961年（昭和36年）9月1日には町制が施行され、「大川町」へと移行しました。この際に、町の名称である「大川」を図案化した新しい町章も制定されています。そして、平成の大合併により、2002年（平成14年）4月1日、大川郡に属していた津田町、志度町、寒川町、長尾町と共に合併し、広域市制を敷く「さぬき市」が誕生しました。これにより、大川町は同日をもって廃止されましたが、旧町域内においては前述の通り、大字名として「大川町」の名が現在も引き継がれています。

行政・地域・教育

町の象徴であった町章は、「大川」の文字を図案化したデザインが用いられていました。町域は、田面、富田中、富田西、富田東、南川の五つの大字によって構成されていました。教育機関としては、中学校が1校（大川町立大川第一中学校、現：さぬき市立さぬき南中学校）と、小学校が2校（大川町立松尾小学校、同富田小学校、いずれも現：さぬき市立さぬき南小学校）が置かれていました。

産業

産業面では、農業と工業がともに営まれていました。農業分野では、イチゴやコメ、タバコの栽培、そして酪農が行われていました。特に工業においては、ボタン製造と縫製業が活発でした。中でもボタン製造は町の主要な産業の一つであり、製造されたボタンは海外へも盛んに輸出されていました。昭和40年代には、日本の輸出用ボタン生産量の約9割を大川町が占めるほど、高いシェアを誇っていた時期もありました。

交通

町内を縦横に走る道路網は、主要地方道として香川県道2号津田川島線や香川県道10号高松長尾大内線があり、さらに香川県道132号田面白鳥線などの県道も整備されていました。公共交通としては、大川バスやことでんバスの路線が運行されていました。また、地域振興の拠点として道の駅みろくが設置され、多くの利用者に親しまれていました。

観光地

豊かな自然や歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。みろく自然公園は、1978年に開園した自然豊かな公園で、園内からは屋島や雨滝山といった景勝地を一望することができました。また、旧恵梨家住宅は、1971年に国の重要文化財に指定された貴重な建築物で、香川県内に現存する代表的な農家建築としてその姿を留めています。その他にも、治水に重要な役割を果たす大川ダム（香川県）があります。

人口と面積

廃止時点での人口は約7000人程度であり、面積は前述の通り34.54平方キロメートルでした。

参考文献

大川町役場財務課『大川町勢要覧 '89』香川県大川郡大川町、1989年。
さぬき市史編さん委員会編『さぬき市旧五町史続編』さぬき市、2019年。