大平喜間多

大平喜間多について

大平喜間多（おおひら きまた、1889年1月15日 - 1959年）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の郷土史家、著述家です。長野県埴科郡寺尾村（現在の長野市松代町東寺尾）に生まれ、地元の松代を中心に、その歴史や文化に関する研究、著作活動に尽力しました。

生涯

20歳前後で松代の新聞『勧業新聞』の記者となり、文筆活動を開始しました。1913年には最初の著書である『松代風土記』を出版。その後も『中信時報』新聞社に移り、30歳で松代町史編纂主任に就任。1929年には、約10年をかけて『松代町史』を刊行しました。また、1937年から昭和30年代まで松代町会議員を務め、地域社会にも貢献しました。

大平は、自らを「郷土史家」ではなく「著述家」と称していました。これは、特定の学問分野にとらわれず、自らの興味関心に基づき、郷土の歴史を多角的に捉え、著述活動を行っていたことを示唆しています。彼の著書には、松代の歴史、人物、風俗などを題材にしたものが多く、小説的な要素を含む作品も存在します。

また、大平は歌人としても活動し、小学校の同級生で歌人の中村柊花と親交を深めました。大平の死を悼み、中村は10首の歌を詠んでいます。

大室古墳群の168号墳は、大平が調査したことから「大平塚」とも呼ばれています。

著作

大平喜間多は、生涯にわたり多数の著作を残しました。以下は、主な著作の一覧です。

『松代風土記』
『松代附近名勝図会』
『松代町史』
『真田幸弘公と恩田木工』
『佐久間象山』
『佐久間象山逸話集』
『奇人か変人か赤帽さん』
『恩田木工民親伝』
『現代語訳　日暮硯』
『吾等の恩師　竹内安治先生』
『片井京助直徹傳』
『赤帽技師 船大工常田壬太郎の生涯』
『本邦民間蒸気製糸の元祖　本六工社創業略史』
『海防の先覚者　真田幸貫傳』
『史跡に指定された　松代藩文武学校』
『現代語訳　ひぐらしすゞり　付録真田幸弘、恩田木工傳』
『松代学校沿革史』（共著）
『松代が生んだ名女優　松井須磨子』（共著）
『吾妻銀右衛門翁傳』（共著）
『佐久間象山（人物叢書）』
『少年郷土史稿』
『日本養糸業の功労者　大里忠一郎伝』
『渋谷竹栖伝』

これらの著作は、松代の歴史や文化を研究する上で貴重な資料となっています。

参考文献

山中さゆり「大平喜間多の著作とその活動」（PDF）『松代』第19号、松代文化施設等管理事務所、2006年3月1日、59-72頁、ISSN 13428837
NAGANO検定実行委員会 編『ながの市完全読本』NAGANO検定実行委員会、2018年6月1日。

関連人物

常田壬太郎 - 『奇人か変人か赤帽さん』『赤帽技師』で扱われた船大工。

大平喜間多は、郷土史家としてだけでなく、地域社会の発展にも貢献した人物として、記憶されるべき存在です。彼の著作は、松代の歴史と文化を未来に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

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