真田幸弘

真田幸弘について



真田幸弘(さなだ ゆきひろ)は、江戸時代中期の大名であり、信濃松代藩の第6代藩主です。1752年に父である真田信安の跡を継ぎ藩主となりました。贈位従三位(1918年)。

藩主就任と財政難



幸弘が藩主となった頃、松代藩の財政は深刻な状況にありました。先代の信安の時代に起こった田村騒動の影響もあり、藩の財政は破綻寸前。藩主の生活費にすら事欠くほどでした。この状況を打開するため、幸弘は恩田民親(通称:木工)を登用し、藩財政の再建に取り組みます。

恩田木工による財政改革



木工は、改革担当者として藩の家臣一同の信任を条件に、大胆な改革に着手しました。重臣たちの反対を押し切って、幸弘は木工を全面的に信頼し、改革を後押しします。木工はまず倹約令を出しましたが、領民の不満が出ない範囲にとどめました。そして、木工の改革で特筆すべき点は、身分の低い者や庶民との対話を重視したことです。通常、藩の実力者は下の身分の者の話を聞くことはほとんどありませんでしたが、木工は藩の重臣や豪商だけでなく、百姓とも積極的に対話をし、不平不満を聞き入れました。また、改革の成功のためには領民の協力が不可欠だと考え、「改革に失敗すれば、私は切腹する」と覚悟を示すことで、領民の理解を得ようとしました。

当時の松代藩では代官の不正が相次ぎ、領民の不満が募り、年貢の未納者も出るほどでした。そこで木工は、過去の未納分の年貢は免除し、今後は必ず納めるようにと領民に求めました。彼の誠実で謙虚な態度が領民の心を動かし、年貢はきちんと納められるようになったといいます。さらに、木工は領民の訴えを聞き入れ、不正を行っていた代官を処罰し、領民への労役を軽減しました。

木工の改革は、他藩に見られるような商業的な改革ではなく、領民の信頼を得ることで問題を解決するというものでした。このため、財政改革とはみなさない見方もありますが、松代藩は木工の政策によって財政を多少なりとも立て直すことができました。また、当時の封建社会においては、百姓や領民から直接話を聞くという木工の率直な態度は、後世から高く評価されています。

木工の死と幸弘の藩政



1762年、木工が46歳で病死すると、幸弘自身が藩政を主導するようになりました。幸弘は藩校「文学館」を創設し、教育の普及に尽力、文化政策を奨励しました。また、幸弘自身も優れた教養人であり、多くの俳句に関する著作を残しています。

子女と晩年



幸弘は5男6女をもうけましたが、自身が結核であったため、幼い子供たちに結核菌が感染し、娘2人を除いてほとんどの子が亡くなるという悲劇に見舞われました。男子の実子がなかったため、1798年に養嗣子の幸専(近江国彦根藩主・井伊直幸の四男)に家督を譲り隠居。1815年に76歳で死去しました。

系譜



父母
父:真田信安
母:慈明院(伊東甚五右衛門の娘、側室)
正室
真松院(松平定賢の娘)
側室
座間氏
田村氏
子女
三千姫(真田幸専正室、生母は座間氏)
井上正甫正室(生母は田村氏)
養子
* 真田幸専(井伊直幸の四男)

関連作品



幸弘を題材にした作品として、1973年のテレビドラマ『荒野の用心棒』第38話「暗殺の凶弾は暁に炸裂して…」に同名の人物が登場します(演:森次晃嗣)。ただし、このドラマの時代設定は天保年間とされており、実在の幸弘とは全くの別人です。ちなみに天保期の松代藩主は、幸弘の娘婿である幸専の養嗣子で、松平定信の次男である真田信濃守幸貫です。

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