大成建設爆破事件

大成建設爆破事件：企業テロの背景と影響

1974年12月10日、東京都中央区に所在する大成建設本社ビルで、東アジア反日武装戦線「大地の牙」グループによる爆弾テロ事件が発生しました。この事件は、連続企業爆破事件の一つとして、社会に大きな衝撃を与えました。

事件の背景：標的とされた大成建設

大成建設は、かつて大倉財閥系の企業であり、その前身は大倉組に遡ります。大倉財閥は、日清・日露戦争や第一次世界大戦などを通じて軍需産業で成長し、「死の商人」とも呼ばれました。東アジア反日武装戦線は、大成建設が過去に信濃川水力発電所建設の際、多数の朝鮮人労働者を虐殺したと主張。また、同社を日本帝国主義の侵略を推し進めた「尖兵」とみなし、テロの標的として選定しました。

事件の概要：爆破と被害

当初、「大地の牙」グループはホテルオークラ敷地内にある大倉集古館を爆破する計画を立てていましたが、最終的に大成建設本社を標的に変更しました。1974年12月10日午前11時、大成建設本社ビルの1階駐車場に仕掛けられた爆弾が爆発。この爆発により、警視庁築地警察署の警察官や大成建設の社員など9名が負傷しました。年末の歳末特別警戒実施中に発生した爆弾テロであったため、警察内部にも大きな衝撃が走りました。

事件の影響とその後

大成建設爆破事件は、企業を標的としたテロという点で、当時の社会に大きな不安と衝撃を与えました。東アジア反日武装戦線による一連の企業爆破事件は、日本の高度経済成長の裏側で忘れ去られようとしていた過去の植民地支配や戦争責任といった問題に、改めて光を当てることとなりました。

しかし、彼らの暴力的な手段は、多くの人々の共感を得るには至らず、むしろ社会的な反発を招きました。事件後、東アジア反日武装戦線のメンバーは相次いで逮捕され、組織は壊滅的な打撃を受けました。

大成建設爆破事件は、日本の戦後社会におけるテロリズムの特異な事例として、歴史に刻まれています。この事件は、企業と社会、そして過去の歴史との関係について、改めて考えさせられる出来事となりました。

参考文献

松下竜一『狼煙を見よ 東アジア反日武装戦線“狼”部隊』
（読売新聞社・戦後ニッポンを読む、1997年） ISBN 4-643-97116-9
（河出書房新社・松下竜一その仕事22、2000年） ISBN 4-309-62072-8

関連項目

東アジア反日武装戦線
連続企業爆破事件
大成建設

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