大戸川ダム

大戸川ダムの概要と歴史

大戸川ダムは、滋賀県大津市の淀川水系大戸川に位置し、ダム建設が進められています。1947年（昭和22年）からの設計が始まり、最終的には洪水調節、上水道供給、発電といった多目的の機能を備えたダムとなる予定です。ダムの型式は重力式コンクリートダムで、高さは92.5メートルにもおよびます。

沿革と建設の背景

1953年に大戸川が豪雨により氾濫し、流域で44人の死者を出したことで、ダム建設の必要性が認識されました。その後、国土交通省近畿地方整備局が1968年に計画を立て、設計や用地の確保が行われてきましたが、2021年時点では本体工事は始まっていませんでした。しかし、補償交渉などは進行中で、滋賀県道16号の工事も行われ、2023年には付替え道路が開通しました。

建設に関する議論

ダム計画は長らく賛否の声が分かれており、特に2005年にダム建設事業が中止さるという答申が出されました。この答申を受けて国土交通省は方針を変更し、中止を発表しましたが、地元では強い反発がありました。当時、大津市と移転した住民は再び自分たちの犠牲が無駄になることに対して不満を示しました。地域の治水のためにはダムが不可欠であるとの意見も多く、滋賀県は工事費の補償を求めるなど強硬な姿勢を維持しました。

知事選とダム計画の変化

ダム建設を支持していた国松善次が2006年の知事選挙で敗れ、代わりに就任した嘉田由紀子は従来のダム計画を見直す方針を掲げました。彼女の当選後、滋賀県内の治水対策についての見直しも求めたのですが、結局、ダム建設が完全に否定されることはありませんでした。2007年には大戸川ダムに関する方針が徐々に柔軟に転じ、「ほかに有効な治水手段がない場合にはダム建設も」との意見も出てきました。これは特に長野県での豪雨被害を受けた結果と考えられます。

ダム建設再開の取組み

2019年には新たに滋賀県知事がダムの重要性を再認識し、建設容認の方針が出されました。2020年には全国的に水害が増加する中、流域6府県が建設容認に転じ、ダム再開の道が開かれました。国土交通省は2021年に淀川水系河川整備計画を策定し、大戸川ダムの工事実施を含めることで本格的な建設再開に向けた動きが始まりました。

治水ダムとしての変更

従来の特定多目的ダムから治水専用のダムに方針が修正されたことは大きな変化でした。この新しい大戸川ダムは日常的には水を貯めない「流水型ダム」として設計されることになり、全国で同様の手法が採用されています。国土交通省直轄のダムの設計において、これまでの貯水ダムの概念から脱却するような進展が見られることとなります。

大戸川ダムは、地域住民の安全を第一とし、治水対策としての役割が期待されるダムへと進化を遂げつつあります。今後の建設の進展とともに、それがどのような効果をもたらすか、注目が集まります。

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