大曾根家の朝

大曾根家の朝（おおそねけのあした）

『大曾根家の朝』は1946年に公開された日本の映画で、木下惠介監督の5作目にあたります。この作品は、木下監督にとって戦後の最初の作品であり、後にキネマ旬報のベストワンにも選ばれました。映画は白黒で撮影され、スタンダードサイズで制作されました。

背景とテーマ

映画は戦時体制下の日本を描き、特に1943年のクリスマスイブから戦後までの2年間を、一つの家族を通して語ります。久板栄二郎によるオリジナル脚本が基となっています。この作品では、普通の人々が戦争によっていかに苦しめられたのかが声高に表現されています。一般的には、特に戦後の混乱を背景にした家庭の姿を通じて、社会の不条理を浮き彫りにした作品として捉えられています。

監督の挑戦と検閲の影響

とはいえ、木下監督特有の細やかな演出に対して、ラストシークエンスに見られる生硬さには疑問も寄せられています。これは脚本の影響も考えられますが、占領軍の監督機関からの厳しい要求や干渉が背景にあると推測されます。戦時中の軍部や内務省と異なり、占領下では新たな検閲が映画制作に影響を与えていたと思われます。

物語の概要

この映画は、戦争によって家庭がどのように影響を受け、母親が一人で家族を支えていく姿を描いています。物語は、主人公である大曽根房子（杉村春子）を中心に展開し、彼女の息子たちや娘との関係を通じて、戦争がもたらす影響と苦悩を浮き彫りにしていきます。

キャストと制作スタッフ

映画には新劇の役者が主役を務め、松竹専属の俳優たちも脇役として参加しています。撮影を担当したのは楠田浩之、編集は杉原よし、音楽は浅井挙曄によるもので、それぞれが映画の雰囲気を創り出しています。特に主演の杉村春子の演技は、観客に深い感動を与えました。

タイトルの表記

この作品の実際のタイトルは「大曽根家の朝」とされていますが、公式な書類や資料では「大曾根家の朝」として表記されています。タイトルの「朝」は、発音について議論があり、「あした」と読むのが一般的とされているものの、実際のセリフでは「……朝」という読みが妥当であるとも言われています。

まとめ

『大曾根家の朝』は、戦後の混乱に直面する一家庭の物語を通じて、当時の日本社会の深い葛藤と希望を描いています。家庭の危機的状況の中で、母の強さと平和の尊さがどのように表現されているのか、ぜひ観る価値があります。

もう一度検索