大木英子

大木英子（おおき ひでこ）

プロフィール

大木英子は、1919年5月10日に北海道小樽市で生まれ、2008年8月3日に生涯を閉じました。彼女は、日本の作曲家として、また日本現代音楽協会の会員として、その名を音楽史に刻みました。旧姓は谷藤。夫は同じく音楽家の大木正夫です。

学歴と師事

小樽高等女学校を卒業後、帝国高等音楽院ピアノ科に進みました。ピアノをマリオ・パッチに、作曲を夫となる大木正夫に師事しました。

作曲活動

1956年、彼女の『ピアノ協奏曲第1番』が日本放送協会の芸術祭管弦楽部門に入選し、作曲家としての才能を広く知られるようになりました。翌年の1957年には、上田仁指揮の東京交響楽団によって、彼女の作品『雪のふるさと』が演奏され、日本人作曲家の作品初演シリーズに名を連ねました。1958年には、ピアノ作品発表会を開催し、その才能を披露しました。この時期には、『ピアノと電子音響による協奏的四章』や「ピアノソナタ」など、実験的な作品も手がけています。

また、1958年には、小奏鳴曲集『谷藤英子ピアノ作品集』が音楽之友社から出版され、彼女のピアノ作品への取り組みが注目されました。1960年代からは、管弦楽作品にも力を注ぐようになります。

1961年には、TBS（東京放送ホールディングス）が創立10周年を記念して設立したTBS作曲賞の第1回で、『ピアノと管弦楽のための協奏詩曲「舞い楽」』が特賞を受賞しました。この作品は、伊福部昭を彷彿とさせる力強い音楽と洗練された書法が特徴で、ピアノの土俗的なリズム、管弦楽の王朝風の響きと打楽器が組み合わさり、日本絵巻のような世界観が表現されています。この作品は、東芝音楽工業によってレコード化されました。

さらに、1963年には、『交響三撰「古今抄」』が再びTBS作曲賞の特賞を受賞し、彼女の作曲家としての地位を不動のものとしました。彼女の作風は、日本民族楽派に近いものと評されていますが、「日本の音楽人名鑑 作曲・指揮者編」では、「自分なりの形で生命の愛、平和への願いを音に託していきたいと思う」と述べているように、1960年代の作曲界で主流であった前衛音楽とは一線を画し、日本の伝統的な音階やリズムを大切にしながら、現代人の心にも響くような洗練された作品を数多く残しています。

主な作品

『フルートとチェロとピアノのための短詩曲集「啄木抄」』
『ピアノ詩集1 子供の一日』(音友)
『変奏曲風練習曲「かぞえうた」』
『野草に寄せる三つの小品集4』
『やさしいピアノ詩集 子どもの風土記』（カワイ楽譜）
『ヴァイオリンとピアノのための詩曲（ベトナムに寄す）』（日本楽譜出版社）
『ピアノ協奏曲 勒岩賦（ろくかんのふ）』
『子どものための合唱組曲 「鳥の歌」』
『弦楽とチェンバロのための四章「染と織」』
『ピアノ協奏曲第6番「愛と死」』


大木英子は、ピアノを中心とした作品を多く作曲しましたが、管弦楽曲や室内楽曲など、幅広いジャンルで才能を発揮しました。彼女の作品は、日本の伝統的な要素を取り入れつつも、現代的な感覚も併せ持っており、聴く人の心を捉える魅力にあふれています。

彼女の音楽は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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