大根島の熔岩隧道

大根島の熔岩隧道

大根島の熔岩隧道は、島根県松江市八束町遅江に位置する、国の特別天然記念物に指定された貴重な溶岩洞です。地元では「幽鬼洞（ゆうきどう）」とも呼ばれ、その神秘的な景観は多くの人々を魅了してきました。

概要

この溶岩洞は、環状（ループ状）の旧洞と直線状の新洞が連結した複雑な形状をしており、総延長は約206.6メートルに及びます。1931年（昭和6年）に国の天然記念物に指定された後、1952年（昭和27年）には特別天然記念物に格上げされました。

形成過程

大根島の熔岩隧道は、約20万年前の火山活動によって形成されました。かつては、溶岩流の表面が冷えて固まった後に、内部の溶岩が流動して空洞ができたと考えられていましたが、近年の調査では、溶岩流に含まれる火山ガスが集合して空洞を作り、それらが連結してできた「ガス溜まり空洞」であるという説が有力です。

大根島は、約22万年前から19万年前の間に噴火を続けた火山島であり、粘性の低い玄武岩で構成されています。溶岩には多数の気泡が含まれており、これはマグマが地中深くから噴出する際に、周囲の水分を取り込み、気化した火山ガスが溶岩中に取り込まれたためと考えられています。これらのガスが寄り集まり、空洞を形成し、連結することで、現在の複雑な洞窟状の形状になったと考えられています。

現状

2021年現在、一部崩落の可能性や洞内の滞水により、危険防止のため一般の入洞は禁止されています。洞口の周囲には金網が設置され、安全対策が講じられています。

富士山火山洞窟研究会の調査

2003年（平成15年）には、富士山火山洞窟研究会によって大根島の溶岩洞窟の調査が行われました。その結果、洞窟の床面はほぼ水平で、斜度もほとんどなく、旧洞の先端部にのみ溶岩流入の痕跡が確認されました。新旧の洞窟は2つの支洞で連結しており、一体のものと考えられています。また、洞口付近には溶岩流の内部で発生したガスが集結し、固まった溶岩の殻を突き破って大気に放出された痕跡が残されており、洞窟形成時の状況を知る上で貴重なものとされています。

生物

かつては、ミミズハゼの一種であるドウクツミミズハゼが生息していましたが、1952年（昭和27年）を最後に確認されておらず、島根県のレッドデータブックでは絶滅種に分類されています。

アクセス

所在地：島根県松江市八束町遅江
交通：JR山陰本線松江駅より松江市交通局（市営バス） 第4路線八束線バス乗車、八束町・由志園入口バス停下車、徒歩約10分

※2021年現在、一般の立ち入り、入洞は禁止されています。

まとめ

大根島の熔岩隧道は、学術的にも貴重な価値を持つ、神秘的な自然遺産です。一般公開はされていませんが、その形成過程や特異な景観は、多くの人々の関心を集めています。今後の調査や研究によって、更なる発見があることが期待されます。

もう一度検索