大梁川遺跡

大梁川遺跡：縄文時代の記憶を宿す地

宮城県刈田郡七ヶ宿町に位置する大梁川遺跡は、縄文時代中期から後期にかけての重要な遺跡です。1984年、七ヶ宿ダム建設に先立ち、約1,000平方メートルの範囲で発掘調査が実施されました。この遺跡は、阿武隈川の支流である白石川と大梁川の合流点付近、標高約300〜310メートルの丘陵平坦面に位置しています。

発見の経緯

1970年にダム計画が明らかになり、翌年から予備調査が開始されました。それ以前にも考古学的な調査は行われていましたが、ダム建設予定地における遺跡は未発見でした。1975年、七ヶ宿ダム建設に伴う埋蔵文化財調査の依頼を受け、七ヶ宿町教育委員会と宮城県教育委員会が合同で分布調査を実施。その結果、大梁川遺跡が確認され、『宮城県遺跡地名表』に登録されました。

発掘調査の成果

発掘調査では、縄文時代の貴重な遺構が数多く発見されました。竪穴建物跡は11棟、敷石建物（敷石遺構）は1棟、埋設土器遺構は10基、土壙は4基、そして広範囲にわたる遺物包含層が確認されています。しかし、調査が部分的なものであったため、集落全体の構造はまだ解明されていません。

中期と後期の建物跡からは、それぞれ複式炉や地床炉といった炉の痕跡が見つかっています。特に第6号建物跡からは、炉とともに埋設された土器が出土しました。この複式炉は、小梁川遺跡で発見された石囲炉を持つ集落の後継と見られています。

遺物包含層からは、中期後葉の大木9式から後期初頭にかけての土器が出土しました。南側の遺物包含層では、大木9式から大木10式への土器様式の変遷が確認されています。西側の遺物包含層は状態があまり良くありませんでしたが、貴重な資料として扱われました。

多様な土器群

大梁川遺跡からは、多様な種類の土器が出土しています。深鉢形土器には、大型・中型・小型の別があり、それぞれ異なる特徴を持っています。大型品は簡素な作り、中型品は口縁部の形状に変化が見られ、小型品は波状口縁など多様な器形が特徴です。いずれの深鉢形土器も、底径が小さく、煮沸に適した形状をしています。

浅鉢には、注口が施された土器があり、古い段階では円孔のみ、後期には筒状の注口部が付いています。これらの土器は、カユ状食品の調理に使われたと考えられ、内外に炭化物が付着しています。

その他にも、器台、蓋、吊手土器、袖珍土器、異形土器などが出土しており、縄文時代中期末葉の土器の多様性を示しています。特に、上面楕円形で二つの注口を持つ浅鉢や、六単位の波状口縁を持つ鉢、一対の把手が付いた三個セットの小型赤彩浅鉢は、他に類例のない貴重なものです。

縄文人の精神世界を映す土偶

中期後葉から末葉にかけての土偶は59点出土していますが、完全な形のものはありません。顔面表現が施された頭部、簡略化された乳房や腹部、椀状の脚部が特徴で、立像形をしています。大型の中空土偶は、編年の基準資料として重要な役割を果たしています。

石器

石器の石材には、珪質頁岩と非珪質頁岩が用いられており、器種によってその比率が異なります。最上川産の良質な珪質頁岩は、スクレイパーや石匙に多く用いられています。また、少数ながら有茎石鏃も出土しています。さらに、垂飾品などの装身具も発見されています。

遺跡の公開と展示

大梁川遺跡の出土品は、東北歴史博物館や七ヶ宿町の「水と歴史の館」などで展示されています。これらの展示を通して、縄文時代の生活や文化に触れることができます。

大梁川遺跡は、縄文時代の文化や生活を知る上で非常に重要な遺跡です。今後の研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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