大森仙太郎

大森仙太郎：海軍中将の生涯と特攻作戦への関与

大森仙太郎（1892年～1974年）は、日本海軍の中枢を担った海軍軍人で、最終階級は海軍中将に上りました。熊本県熊本市に生まれた彼は、海軍兵学校を卒業後、水雷に関する高い専門性を身に着け、数々の艦艇の指揮を執り、連合艦隊参謀なども務めました。その卓越した能力は、魚雷射法の開発に貢献し、海軍の戦力向上に大きく寄与したと評価されています。

華々しい海軍キャリアと太平洋戦争

海軍兵学校卒業後、大森は着実にキャリアを積み重ねていきました。少尉として任官後、順調に昇進を重ね、駆逐艦長や戦隊司令官を歴任。太平洋戦争勃発時には、第1水雷戦隊司令官として、真珠湾攻撃やセイロン沖海戦など、重要な作戦に参加しました。その後も第5戦隊司令官として戦闘に参加しましたが、ブーゲンビル島沖海戦での敗北により解任。しかし、その経験と能力は、その後も海軍内で高く評価され続けました。

特攻作戦の指揮：苦悩と決断

1944年、日本海軍は劣勢に立たされ、特攻作戦が本格的に検討され始めます。大森は、この特攻作戦の中核を担う海軍特攻部長に任命されました。これは、従来の常識を覆す、自爆攻撃を主体とする作戦です。大森は、この重要な役割を担うにあたって、全権委任を条件に就任。震洋などの特攻兵器の開発と、搭乗員の育成に尽力しました。限られた時間の中で、志願者の確保や訓練など、数々の困難を乗り越えながら、作戦遂行に奔走したのです。資料によると、震洋搭乗員の志願者数が予想以上に多かったことに安堵したという記録が残されています。

終戦とその後

終戦後、大森は第7艦隊司令長官に就任しますが、まもなく予備役に編入。その後、公職追放の仮指定を受けるなど、戦後の混乱期を過ごしました。1974年、82歳で死去。

大森仙太郎が残したもの

大森仙太郎の生涯は、日本の近代海軍史と深く結びついています。彼が築き上げた功績は、魚雷射法の開発のみならず、太平洋戦争における指揮官としての経験、そして特攻作戦における責任ある役割まで多岐に渡ります。特攻作戦への関与は、現在でも様々な議論を呼んでいますが、彼の決断と行動は、戦時下の日本海軍の状況と、その中で彼が下した苦渋の決断を理解する上で重要な要素となっています。彼の残した記録や証言は、歴史を学ぶ上で貴重な資料として、今もなお研究され続けています。

参考文献

海軍水雷史刊行会『海軍水雷史』（1979年）
外山操編『陸海軍将官人事総覧 海軍篇』（芙蓉書房出版、1981年）
海軍歴史保存会編『日本海軍史 第9巻 将官履歴 上』（第一法規出版、1995年）
福川秀樹『日本海軍将官辞典』（芙蓉書房出版、2000年）
* 秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版（東京大学出版会、2005年）

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