大森正樹

大森正樹氏は、1945年6月6日に兵庫県で生まれました。精神医学を学んだ後、西洋哲学へと進み、京都大学大学院文学研究科で博士課程を修了しました。その後、南山短期大学、南山大学で教鞭をとり、2000年には京都大学より博士（文学）の学位を授与されました。

大森氏の研究は、西洋哲学と東方キリスト教神学の融合に焦点を当てています。特に、14世紀の東方キリスト教神学者グレゴリオス・パラマスの神学思想に深く傾倒しており、彼の主著『エネルゲイアと光の神学 グレゴリオス・パラマス研究』は、パラマス研究における重要な貢献として評価されています。この研究は、東方キリスト教の神秘主義的な側面を深く掘り下げ、神のエネルギー（エネルゲイア）と光の概念を通して、神との合一を追求するパラマスの思想を明らかにしています。

また、『東方憧憬 キリスト教東方の精神を求めて』では、東方キリスト教の霊性と文化を探求し、その魅力を紹介しています。さらに、大森氏は『観想の文法と言語　東方キリスト教における神体験の記述と語り』において、東方キリスト教における観想の体験と言語の関係性を分析し、神体験をどのように表現してきたかを考察しています。

大森氏の著作は、神学研究における重要な貢献であるとともに、東方キリスト教の思想と霊性に触れるための入門としても広く読まれています。また、多くの翻訳書も手掛けており、マイスター・エックハルトやジョージ・A・マローニィなど、著名な神学者の著作を日本語に翻訳することで、日本の神学研究に大きく貢献しています。特に『フィロカリア』シリーズの翻訳は、東方キリスト教の霊性への理解を深める上で非常に貴重なものです。

2024年には、長年の研究と教育への貢献が認められ、瑞宝小綬章を受章しました。大森正樹氏は、神学研究の発展に大きく貢献しただけでなく、東西の思想と文化の架け橋となる役割も果たしており、その業績は広く後世に伝えられるでしょう。

大森氏の研究は、単に過去の神学思想を解説するだけでなく、現代の神学的な課題にも深く関わるものであり、彼の著作は、神学を学ぶすべての人にとって、重要な参考資料となるでしょう。

主な著書：
『エネルゲイアと光の神学 グレゴリオス・パラマス研究』（創文社） 2000
『東方憧憬 キリスト教東方の精神を求めて』（新世社） 2000
『観想の文法と言語　東方キリスト教における神体験の記述と語り』（知泉書館、南山大学学術叢書） 2017

主な論文：
『ディオニュシオス『神名論』における 「テアルキア」について』（『南山神学』33 号 2010 年 3 月）

主な翻訳書：
『マイスター・エックハルト 御言の形而上学と否定神学』（エミリ・ツム・ブルン, アラン・ド・リベラ、国文社） 1985
『東方キリスト教神学入門 つくられざるエネルゲイア』（ジョージ・A・マローニィ、新世社） 1988
『雅歌講話 ニュッサのグレゴリオス』（宮本久雄ほか共訳、新世社） 1991
『美と信仰 イコンによる観想』（マリア・ジョヴァンナ・ムジ、新世社、東方キリスト教叢書） 1994
『イエスの祈り』（オリヴィエ・クレマン, ジャック・セール、宮本久雄共訳、新世社、東方キリスト教叢書） 1995
『神学大全 第17冊 (第2-2部 34-56)』（トマス・アクィナス、大鹿一正, 小沢孝共訳、創文社） 1997
『フィロカリア 東方キリスト教霊性の精華 第7巻』（新世社） 2009
『フィロカリア 東方キリスト教霊性の精華 第8巻』（宮本久雄, 高橋雅人, 北垣創共訳、新世社） 2012
『フィロカリア 東方キリスト教霊性の精華 第9巻』（橋村直樹共訳、新世社） 2013
『東方教会の精髄 人間の神化論攷 聖なるヘシュカストたちのための弁護』（グレゴリオス・パラマス、知泉書館、知泉学術叢書） 2018

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