大正村 (北海道)

大正村：十勝平野の足跡

北海道帯広市南東部に位置していた大正村は、十勝平野の豊かな土地で発展を遂げた村です。その歴史は、明治時代後期から昭和中期に及び、幾多の変遷を経て現代の帯広市の一部となりました。本稿では、大正村の地理、歴史、交通、教育といった側面から、その姿を詳細に見ていきます。

大正村の地理

大正村は、十勝平野の南側に位置していました。札内川、戸蔦別川、途別川といった河川が村内を流れ、豊かな水資源に恵まれていました。この地理的条件が、農業の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。広大な平野は、農作物の栽培に適しており、特産品である「大正金時」と呼ばれる紅金時豆の生産が盛んであったことも知られています。

大正村の成立と変遷

大正村は、明治35年（1902年）4月1日に、上帯広村、幸震村、売買村の3村が合併して誕生しました。それぞれの村は、更に複数の小村が合併して成立しており、その歴史は複雑です。その後、大正4年（1915年）4月1日に正式に「大正村」と命名されました。元号である「大正」を村名に採用したことは、当時における近代化への期待を表していると言えるでしょう。

大正村の範囲は、成立当初は現在の帯広市の南部から中札内村、更別村にかけて広がっていました。しかし、昭和初期にかけて幾度かの分村、編入を経て、その区域は変化していきます。大正13年（1924年）には川西村が分村、大正15年（1926年）には幕別村から一部を編入。昭和22年（1947年）には中札内村や更別村が分村しました。これらの変遷は、人口増加や行政運営上の必要性から起こったものと考えられます。

昭和32年（1957年）には、川西村とともに帯広市に編入され、村としての歴史に幕を閉じました。しかし、その歴史は、現在も帯広市大正町として、地名に刻まれています。

産業と交通

大正村の産業の中心は農業でした。特に、紅金時豆の生産は村の重要な経済基盤でした。昭和28年（1953年）には農林省から「大正金時」として銘柄認定を受け、その品質の高さが認められました。また、大正9年（1920年）には北海道製糖会社（現・日本甜菜製糖）帯広工場が村内に開設され、製糖業も重要な産業となりました。

交通面では、昭和4年（1929年）に広尾線の帯広駅〜中札内駅間が開業し、愛国駅、大正駅（当初は幸震駅）、中札内駅が開設されました。その後、昭和5年（1930年）には大樹駅まで延伸され、更別駅、上更別駅も開設されました。鉄道の開通は、村の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。昭和30年（1956年）には幸福駅も開設され、交通網はますます充実していきました。

教育

大正村には、村の住民を支えるための教育機関が充実していました。昭和32年（1957年）当時の教育機関としては、大正高等学校、大正中学校、愛国中学校、以平中学校、上以平中学校、戸蔦中学校、大正小学校、愛国小学校、上途別小学校、以平小学校、上以平小学校、幸福小学校、戸蔦小学校がありました。これらの学校は、村の子供たちの教育に大きく貢献しました。

まとめ

大正村は、十勝平野の豊かな自然の中で発展を遂げた村でした。その歴史は、町村合併、分村、鉄道開通、産業発展など、様々な出来事が複雑に絡み合い、現代の帯広市へとつながっています。農業と製糖業を中心とした経済、充実した教育機関、そして広尾線沿線に発展した交通網は、大正村の繁栄を支えました。その歴史は、現代の帯広市を考える上で、重要な要素となっています。

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