広尾線

広尾線：十勝平野を駆け抜けた鉄路の記憶

広尾線は、かつて日本国有鉄道（国鉄）が運営していた地方交通線で、北海道の帯広駅から広尾駅までを結んでいました。十勝平野を南下する全長84kmの路線は、地域の足として、また観光路線としても利用されていましたが、1987年に全線廃止となりました。

路線概要

広尾線は、帯広駅を起点として、大正、中札内、上更別、忠類、大樹などを経由し、広尾駅に至る単線の非電化路線でした。タブレット閉塞式という方式で列車の安全運行が確保され、大正、中札内、上更別、忠類、大樹の5駅で列車の交換が可能でした。最盛期には、普通列車の他に、観光客向けの臨時列車も運行されていました。

運行形態

廃止前年の1986年時点では、全線通しの普通列車が1日6往復運行されていました。かつては、観光シーズンには臨時準急「ひろお」や、士幌線と直通する臨時急行「大平原」が運行され、観光客を魅了しました。「大平原」は、盲腸線同士を結ぶ珍しい運行形態で、広尾では国鉄バスへの接続も行われていました。

歴史

広尾線は、1929年から1932年にかけて順次開業し、全線が開通しました。当初は、日高本線の一部となる計画もありましたが、広尾以南は建設されず、国鉄バスが代替輸送を担いました。1980年に国鉄再建法が成立すると、広尾線は第2次特定地方交通線に指定され、1987年に惜しまれつつ全線廃止となりました。

「愛の国から幸福へ」

広尾線には、愛国駅と幸福駅という縁起の良い名前の駅があり、この2駅間の切符は「愛の国から幸福へ」というキャッチフレーズで、全国的な人気を集めました。この切符は、当時の切符ブームの火付け役となり、広尾線の収入の大部分を占めるほどでした。現在でも、代替バスを運行する十勝バスが、この切符を硬券で発売しています。

廃止後の状況

広尾線の廃止後、十勝バスが代替バスの運行を開始しました。バス路線は、増発やルートの変更などが行われ、地域住民の生活を支えています。また、旧駅舎の一部は、記念公園として整備されたり、他の施設に転用されたりしており、当時の面影を残しています。中札内美術村では、旧広尾線の枕木が遊歩道に使用されています。

広尾線の遺産

広尾線は、その歴史と沿線の風景から、多くの人々に愛されてきました。廃線後も、その記憶は人々の心の中に残り続けています。「愛の国から幸福へ」の切符は、今もなお多くの人に愛され、広尾線の歴史を語り継いでいます。広尾線は、地域の人々にとって、単なる交通手段ではなく、思い出と文化を繋ぐ大切な存在だったと言えるでしょう。

駅一覧

広尾線には以下の駅がありました。
帯広駅
愛国駅
北愛国駅
大正駅
幸震駅
中札内駅
更別駅
上更別駅
忠類駅
大樹駅
石坂駅
豊似駅
野塚駅
広尾駅

これらの駅は、現在ではその多くが廃止されていますが、一部は記念公園として整備され、当時の面影を伝えています。

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