大沢氏

大沢氏の歴史

大沢氏（おおさわし）は、日本の歴史に名を刻む武家、華族、士族の家系であり、その起源は藤原北家中御門流の庶流とされる持明院家に由来します。もともとは遠江国堀江の豪族であり、今川氏や徳川氏に仕官した経歴があります。江戸時代には高家旗本として確固たる地位を築きましたが、明治維新後には石高偽装が発覚し、士族に降格されるという波乱の歴史を持ちます。

先祖と戦国時代以前

大沢氏の家伝では、藤原北家中御門流庶流である公家持明院家の当主、持明院基世の兄にあたる基長からその系譜が続いているとされていますが、これは歴史的な検証が必ずしもなされているわけではありません。基長の後嗣である基秀は、貞治年間に遠江国敷知郡堀江へ移り、堀江城を築いたと伝わっています。基秀の子である基久の代には、基秀が領有していた丹波国から「大沢」の姓を名乗るようになったとされます。

戦国時代には、今川氏に仕官していた大沢氏ですが、基胤の時代にあたる永禄12年、徳川家康の侵攻に降伏することで徳川家の家臣となりました。

江戸時代の取り組み

江戸時代に入ると、基胤の子である基宿が堀江1550石を領し、幕府の旗本に取り立てられます。慶長8年には、徳川家康から将軍宣下の際に朝廷との式典作法の管掌を任されたことがあり、この役目が発端となり、大沢家は朝廷と幕府の儀式典礼を重要な家職として世襲するようになります。これにより、大沢家は最初の高家旗本家とも言える地位を確立しました。

その後、基宿の子である基重は領地を2550石に増加し、彼の三男基哲も徳川家に仕え、2600石の一般旗本として名を残しました。さらに、大沢家の別系統にも複数の旗本家が存在し、重要な役割を果たしていたことが伺えます。

また、持明院基久が大坂の夏の陣で戦死した後、基宿の次男基定が持明院家に養子に入ったことが、家伝に記されている事柄に影響を与えました。持明院家庶流であるという大沢家の名誉は不確実であるにもかかわらず、江戸幕府の政策によって持明院家に押し付けられ、大沢家は事実上その分家のような形に位置付けられました。

明治時代の波乱

明治元年、当主の大沢基寿が朝臣に転じた後、浜名湖の開墾予定地を開墾地と偽って石高を増やし、諸侯昇格を求める請願を政府に提出しました。本家筋の持明院家からも請願が出された結果、この申請は許可され、大沢家は堀江藩を立藩し華族に列しました。しかし、明治2年に廃藩置県が行われた際、その偽装が発覚しました。大沢家は浜名湖からの魚が取れると弁明したものの、結果として基寿は士族に降格され、禁錮刑にされるという事態に陥りました。この出来事は「万石事件」として知られ、主だった家臣たちも処罰を受けました。

明治17年には華族令により、華族が五爵制になるとき、大沢家は男爵の候補に挙げられたものの、最終的には除外され、士族の地位のままで終わりました。大沢家は長い歴史の中で様々な起伏を経ており、多くの歴代当主がその系譜を守り続けてきました。特に持明院家との関連や、武家としての役割を果たしたことは、大沢氏の歴史を語る上で欠かせない事実です。

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