大浦事件

大浦事件の概要

大浦事件（おおうらじけん）は、1914年から1915年にかけて発生した贈収賄の疑惑が浮上した重要な事件です。この事件は、大隈重信内閣の大浦兼武内相と衆議院議員間での不正行為に起因し、当時の日本の政治に大きな影響を与えました。事件は特に「高松事件」とも呼ばれています。

事件の背景

1914年4月、第一次山本内閣がシーメンス事件により辞職し、その後の首相選定が難航したとき、元老の井上馨の提言で大隈重信に大命が下り、第2次大隈内閣が成立しました。内閣の組閣にあたり、大隈は同志会との協力関係を重視しながら進行しましたが、内務大臣ポストを巡って尾崎行雄や大石正巳からの競争がありました。最終的に、大隈は内相を兼務する形で大浦を農商務大臣に任命し、政策を進めることとなりました。

大浦の贈収賄

第一次世界大戦が勃発した1914年12月、大隈内閣は二個師団の増設案を議会に提出しましたが、これに対して政友会が反対していました。大浦は議会内の情勢を有利にするために、書記官長の林田亀太郎を介し、議員への買収工作を行いました。彼は4万円を用意し、さらに1万円を政友会の板倉中に渡すことで、反対意見を和らげようとしました。この結果、18人の議員が脱党し、大正倶楽部が結成されたものの、最終的には増設案は否決されました。大浦は、この否決が陸海軍の対立を引き起こし、後の選挙で逮捕者が出る可能性を心配していました。

事件の発覚と影響

1915年5月25日、政友会の村野常右衛門が検察に告発状を提出し、事件の詳細が明るみに出ました。告発は香川県からの立候補者と大浦との金銭が絡む事案であったため、事件は大きな問題となり、大隈内閣に波紋を呼びました。司法大臣の尾崎行雄は、大浦に対して事態が深刻化する前に引退するよう提案しましたが、大浦は公正に法廷で争う意思を示しました。しかし、最終的には7月30日、大浦は辞表を提出し、内閣は大隈主導の形で改革を迫られました。

政治的帰結

大隈内閣の他の閣僚も辞表を提出しましたが、大隈は政権を維持する意志を示し、結果的に大正天皇が辞表を却下し、内閣は大幅に改造されて継続されることになりました。この事件は大隈が買収工作を知らなかった証言もある一方で、平沼検事総長がそれを否定するような発言をするなど、様々な見解がありました。

裁判と判決

この事件に関連して逮捕されたのは多くの人物でしたが、中でも大浦は起訴を免れました。一方、他の被告たちは収賄罪で起訴され、高松地方裁判所で審理が行われました。判決では、板倉中に懲役6か月、白川友一に懲役4か月、他にも複数の被告が有罪判決を受ける結果となりました。これが示すように、政治と犯罪の結びつきが強く、当時の日本社会に深刻な影響を与えました。

参考資料

• - 小原直『小原直回顧録』（中公文庫）
• - 伊藤之雄『大隈重信（下）「巨人」が築いたもの』
• - 山本四郎「大浦事件の一考察」『奈良大学紀要』

このように、大浦事件は贈収賄の実態を浮き彫りにし、当時の政治状況や選挙の影響に大きな教訓を与える歴史的な事例として記憶されています。

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