大浦崎収容所

大浦崎収容所は、1945年の沖縄戦で米軍が設置した民間人収容所の一つです。現在の米海兵隊キャンプ・シュワブ基地（名護市辺野古）内に位置し、戦時中、多くの民間人が収容されました。収容所は、特に沖縄本島北西海岸に設置された他の収容所と同様に、劣悪な運営状況であり、収容者の中で亡くなる人も少なくなかったとされています。戦後、収容所跡は米軍基地キャンプ・シュワブとなり、十分な遺骨収集が行われていない現状です。

概要

大浦崎収容所には、1945年6月末のわずか3日間で2万人以上の住民が収容されたと伝えられています。特に今帰仁村、本部町、伊江村の住民は地区ごとに分けられ、旧久志村（久志・辺野古）の住民も合わせて、収容者数は約3万人に達しました。当時、北西部にあった米軍の民間人収容所は運営状況が非常に粗雑で、沖縄戦を生き延びた人々も収容所で命を落とすという悲劇が相次ぎました。

収容された人々は、何も無い荒れ果てた高地に次々と送られ、当初はテントもなく、真夏の強い日差しを遮るものもありませんでした。人々は、枝木を拾い集めて日よけを作り、地面で寝起きする生活を強いられました。食糧は慢性的に不足し、マラリアも蔓延するなど、劣悪な環境で多くの犠牲者を出しました。米海軍が記録した大浦湾収容所の写真は、現在、沖縄県公文書館で見ることができます。戦没者の名前が刻まれた「平和の礎」の資料によると、死没場所が「大浦崎」や「大浦崎収容所」と記載された戦没者は304人にのぼります。

民間人の収容

伊江島の住民

沖縄戦における伊江島の戦いは、1945年4月16日に始まりました。島民総出で建設された帝国陸軍伊江島飛行場は、米軍の激しい攻撃目標となり、6日間の戦闘で住民を含む約4,700人が死亡しました。スパイ行為とみなされることを恐れたため、投降を選ぶことができず、集団自決（強制集団死）や日本兵による虐殺も発生し、住民の約半数にあたる1,500人が命を落としました。

米軍は島を占領後、直ちに日本軍の飛行場を整備・拡大し、米軍伊江島補助飛行場の建設に着手しました。捕虜となった住民は、慶良間諸島の渡嘉敷や座間味、あるいは大浦湾収容所に収容されました。まだ降伏していない日本軍が潜伏する渡嘉敷島に送られた伊江島住民の中には、日本軍にスパイとして殺害されるという痛ましい事件も起こりました。大浦崎収容所では、伊江島からの住民は西側の地区に収容されました。伊江島への帰還が許可されたのは、沖縄戦から2年後の1947年3月でした。

本部町の住民

本部半島は、沖縄本島中南部のような激しい砲火を受けることはありませんでしたが、敗残兵となった日本兵と米兵との間で住民が犠牲となることもありました。1945年6月になると、本部半島では本部飛行場や備瀬の小飛行場の土地接収と建設が始まり、住民は強制的に東海岸の大浦崎収容所などに移送されました。収容所では食料が不足しており、食料を求めて動けば性暴力の標的とされることもありました。

収容所から解放された後も、収容されていた間に米軍基地となった土地には帰ることができず、しばらくの間、米軍のテントで集団生活を送ることを余儀なくされました。当時の暮らしについて、『備瀬史』は「食糧事情は大浦崎なみに困窮していた」と記しています。

今帰仁村の住民

今帰仁村では、今帰仁の住民や疎開していた中南部の住民が、羽地や大浦崎収容所に送られました。現在の辺野古弾薬庫に近い場所に収容されたとされています。今帰仁村の『今泊誌』には、「哀れなつかし故郷から大浦崎へと運ばれて、日毎日毎にやせ細る」「恨みは深し四百の、魂は眠る大浦に、今日も降る降る涙雨」と、当時歌われた『大浦崎哀歌』が記録されています。

収容所の記憶

米海兵隊公式HPから削除

2017年12月12日、東京新聞が、米海兵隊公式ホームページのシュワブ基地の沿革に久志村を「大浦崎市」と誤って記載していることを指摘しました。その後、海兵隊は大浦湾収容所の記述そのものを全てページから削除しました。現在、キャンプ・シュワブのページには、米軍が管理・運営していた「大浦崎収容所」の記述はありません。

新基地建設と大浦崎収容所

辺野古の新基地建設に伴い、キャンプ・シュワブ内にある数少ない大浦崎収容所の遺構が取り壊されることになっています。名護市教育委員会は沖縄防衛局を通して現状保存を求めてきましたが、防衛局は米軍側の意向で現状保存を行わず、調査と記録を行った後に隊舎を建設する計画を明らかにしました。大浦崎収容所跡地には、住民の遺骨が眠っている可能性も指摘されていますが、これまでの調査では一度も遺骨は収集されていません。

沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松氏は、遺骨収集調査が十分に行われないまま「戦死者の上に軍事基地を作ることは、死者に対する冒涜だ」と非難し、遺骨や遺跡の調査もされないまま埋め立てて新たな米軍基地を建設することに強く反対しています。

2020年4月、防衛省は設計変更を県に申請し、辺野古埋め立ての土砂を県内産に切り替え、その土砂の7割を沖縄本島南部、特に激戦地であった糸満市と八重瀬町から調達すると発表しました。現在も多くの日本兵や住民の遺骨や遺品が残されており、遺骨収集が行われている土地の土を米軍基地建設の埋め立て土砂として使うことは、人道上決して許されないという憤りの声も上がっています。

脚注

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