大澤三之助

大澤 三之助（おおさわ さんのすけ）の生涯と業績

大澤三之助は1867年に江戸の麻布に生まれた日本の建築家で、1945年に逝去しました。彼の父親である大沢昌督も町医者をしており、後に陸軍の薬剤官に就任しました。三之助は若い頃から才能を発揮し、18歳で尾崎紅葉らの文学サークル「硯友社」の雑誌『我楽多文庫』の挿絵を手がけました。これが彼の芸術に対する初期の一歩でした。

1891年に第一高等学校を卒業後、東京帝国大学工科大学の造家学科へ進学し、1894年に卒業。その後、約1年間兵役につくことで、国家への奉仕の心が育まれました。卒業後は教育者としての道を歩むことになり、1897年には東京美術学校の図案科の講師に任命されました。彼は1902年にはその図案科の教授に昇進し、1899年から1904年にかけては東京帝国大学でも教壇に立ちました。

さらに、三之助は1906年に文部省の留学生としてイギリスに渡り、その後フランスやイタリアを訪れるなど、国際的な視野を広げました。1910年にはロンドンで開催される「日英博覧会」の関係で滞欧を延長し、帰国は同年の10月となりました。彼は1914年に宮内省内匠寮の技師としても勤め、1915年には工学博士の称号を与えられます。その後、内匠寮工務課長となり、また講師としての活動も続けましたが、1924年には宮内省を退職します。

1927年からは新設の東京高等工商学校（後の芝浦工業大学）で建築学科の学科長として新たな教育の道を切り開きました。1935年には中央工学校の校長に就任し、若い世代の育成に貢献しました。しかし、1945年の7月、戦時中の疎開先であった鎌倉で彼は生涯を閉じることとなります。

彼の功績は多岐にわたり、1918年には勲四等瑞宝章を受賞し、その後の建築界に多大な影響を与えました。三之助の代表的な作品には、東京美術学校図案科教室（1914年、未現在）、ローマ日本美術展会場（1930年、未現在）などがあり、彼は数々の住宅プロジェクトや論文も発表しています。

住宅の一例としては、1902年に施工された有栖川宮邸の一部が円福寺に移築されて現存しており、他にも岩村透邸などの名作があります。また、学術的な業績としては、1903年に三之助が塚本靖と共著した「日光廟建築論」、1904年の「和城に就て」、1912年に田園都市をテーマにした「ガーデン・シチーに就いて」などが挙げられます。

また、三之助の私生活についても触れておくと、彼の家族は優秀な人物が揃っていました。姉は化学者の宇都宮三郎と結婚、妹は福澤諭吉の長男と結婚しています。彼の妻は長谷部辰連の娘であり、建築家の長谷部鋭吉の姉でもあります。三人の息子の中には建築家が二人、洋画家が一人いるなど、家族全体が異なる分野で活躍しています。

大澤三之助の影響は日本の建築界に今なお色濃く残っており、彼が築いた教育の礎は多くの後進に受け継がれています。

もう一度検索