大田運輸区

大田運輸区

概要

大田運輸区は、かつてJR東日本首都圏本部管轄下に置かれていた乗務員組織です。主に京浜東北線および根岸線の運転士・車掌が所属していました。前身は歴史ある蒲田電車区で、長らく車両基地としての機能も担っていました。組織改編を経て大田運輸区となり、2025年3月14日をもって廃止。翌15日からは品川統括センターの乗務ユニットとして業務が引き継がれています。本項では、大田運輸区およびその前身である蒲田電車区の沿革や施設について詳述します。

蒲田現業事務所

大田運輸区の活動拠点であった現業事務所は、「蒲田現業事業所」と呼ばれています。所在地は蒲田駅にほど近い場所で、大田区役所の庁舎や近隣のオフィスビルに挟まれた一角に位置し、東海道線の線路に面した側にあります。この建物は地上6階建ての構造を持ち、1階は駐車場や保守作業用のスペース、そして2階から上階が乗務員の執務や休憩などに使用される事務所スペースとなっています。このビルは2014年9月から2016年3月にかけて建設されました。

乗務範囲

大田運輸区に所属する乗務員は、主に以下の区間を担当していました。

京浜東北線：大宮駅から横浜駅までの全区間
根岸線：横浜駅から大船駅までの全区間

これにより、京浜東北・根岸線の主要区間の運行を支えていました。

総合訓練センター 蒲田トレーニングセンター

大田運輸区の構内には、駅員の異常発生時対応能力向上を目的とした「総合訓練センター 蒲田トレーニングセンター」が設けられています。2019年7月1日に開設されました。かつて電車庫やテニスコートなどが存在した場所を再整備して建設されています。

このトレーニングセンターには、実践的な訓練を行うための設備として、レールが敷かれた訓練線が複数設置されています。「荏原線」と称される190メートルの訓練線が2本、さらに80メートルの訓練線が1本整備されています。これらの訓練線の両端には、訓練用の「大田駅」と「志茂田駅」という名の駅が設置されています。また、訓練に使用される車両として、京浜東北線で活躍するE233系1000番台に似た小型の「ミニ車両」が2両用意されており、これらは蓄電池を動力源として走行します。

主な訓練内容には、ホーム上での基本的な動作確認、駅におけるお客様の救済手順の実践、列車見張員としての安全確保訓練、および駅構内での落とし物発見・習得に関する訓練など、多岐にわたる実践的なシミュレーションが含まれます。

歴史

大田運輸区の前身である蒲田電車区は、1923年12月1日に品川電車庫の蒲田分庫としてその歩みを始めました。翌1924年5月1日には蒲田電車区として独立し、車両基地としての機能を持ちました。

車両配置に関しては変遷があり、1981年6月1日には東神奈川電車区に分散していた横浜線の車両配置が蒲田に集約されました。しかし、1986年には京浜東北線の車両配置が浦和電車区（現在のさいたま車両センター）に集約され、さらに1996年12月1日には横浜線の車両も大船電車区（後の鎌倉車両センター）へ転出したことで、蒲田電車区は配置車両のない区となりました。

車両無配置化後も、蒲田電車区は京浜東北線車両の留置や仕業検査を行う車庫としての機能は維持されました。

組織面では、2016年3月26日に乗務員基地の再編成が行われ、蒲田車掌区および下十条運転区と統合される形で「大田運輸区」が発足し、運転士と車掌の両方が所属する乗務員専門の組織となりました。

施設の変遷としては、前述の現業事業所ビルが2014年から2016年にかけて建設され、蒲田トレーニングセンターは、旧電車庫などの建物を解体した上で2018年から建設が進められ、2019年7月1日に開設に至っています。

そして、2025年3月15日付で大田運輸区は廃止され、品川営業統括センターと統合された新しい組織「品川統括センター」の乗務部門の一部となりました。

また、歴史上の出来事として、1966年12月18日には、点検中の103系電車が原因不明の暴走を起こし、車止めを乗り越えて近隣の民家に衝突する事故が発生しています。この事故の原因は、検査手順の誤りによるものと結論付けられました。

蒲田電車区

大田運輸区の前身である蒲田電車区は、JR東日本東京支社に属し、主に運転士が配置されていた組織です。1996年12月まで車両基地として機能していましたが、その後の車両転属により配置車両はなくなりました。しかし、車両の日常的な検査（仕業検査）や留置場所としての役割は引き続き担っていました。蒲田電車区に配置されていた車両の車体には、当時の東京地域本社を示す「東」と、蒲田の電報略号である「カマ」を組み合わせた「東カマ」という略号が記されていました。

過去の配置車両

蒲田電車区には、1996年12月1日の車両無配置化以前、様々な車両が所属していました。

205系電車: 主に横浜線用として、1988年から1989年にかけて新製車両が投入されました。当初は7両編成でしたが、1994年には6扉車のサハ204形を組み込み8両編成化されました。計8両編成26本が配置されましたが、1996年に大船電車区へ転属しました。
103系電車: 京浜東北線用として配置されていましたが、1986年には浦和電車区へ集約されました。また、横浜線用としても運用されましたが、205系への置き換えに伴い他区へ転属しました。
* 72系電車: 京浜東北線などで使用されていましたが、1971年までに103系への置き換えが進み、配置がなくなりました。

なお、1996年以降は車両配置はありませんでしたが、京浜東北線用車両（さいたま車両センター配置）が車庫として使用されていました。

文学作品との関連

著名な作家、松本清張の長編小説『砂の器』には、大田運輸区の前身である国鉄蒲田操車場が登場します。この縁から、小説を原作とする映画やテレビドラマ作品において、蒲田周辺がロケ地として使用されたことがあります。

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