大矢市次郎

大矢市次郎：新派の名脇役とその影響

大矢市次郎（おおやいちじろう）は、1894年に東京で生まれた、日本の俳優です。彼の俳優人生は、大正から昭和にかけて、その独特な演技力と名脇役としての存在感で知られるようになりました。初舞台は1907年、伊井蓉峰主演の舞台『乞食の子か大名の子か』で、ここから彼の華やかなキャリアがスタートしました。

若き日の舞台経験

幼少期から芸事に親しんできた大矢は、初舞台を経て、伊井の弟子である藤井六輔に師事しました。彼は藤川宗六という芸名を名乗りますが、後に本名の大矢市次郎で活動することになります。大矢は18歳のとき、60歳の役を演じる機会があり、この演技をきっかけに老け役を得意とするようになりました。彼の演じた多くの老け役は、観客に深い印象を与え、次第に彼の名は広まりました。

新生新派の立ち上げ

新派劇団を転々とした後、1939年に大矢は花柳章太郎や伊志井寛、柳永二郎とともに『新生新派』を結成します。この劇団は、その後の新派形成の基盤となり、大矢は中心メンバーとして活躍します。彼の貢献は、新派劇の隆盛に大いに寄与しました。

栄誉ある受賞歴

1962年に大矢は、芸術院賞および紫綬褒章を受賞しました。これは彼の長年の努力と貢献に対する高い評価であり、彼の演技力は日本の演劇界において重要な位置を占めていることを示しています。さらに、1967年には勲四等旭日小綬章を受章し、その名声は高まる一方でした。

新しい挑戦と最期の舞台

同年、彼は文学座の公演『大寺學校』に客演し、新派劇以外の舞台に初めて立ちます。これにより、彼の活動の幅が広がり、観客からの注目を集めました。大矢市次郎は、1972年に肺癌により亡くなるまで、彼の演技で多くの人々を魅了し続けました。最後の公演は、前年の歌舞伎座での『風流深川唄』での利三郎役でした。

後進たちへの影響

彼は、初代水谷八重子や花柳章太郎、伊志井寛と並び、新派四天王と称されています。彼の弟子には大鹿次代などがいて、後進の育成にも貢献しました。大矢市次郎の存在は、日本の新派劇に欠かせないものであり、その影響は今もなお受け継がれています。彼の数々の業績と演技力は、演劇界の宝として語り継がれることでしょう。

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