大矢東吉

大矢東吉：激動の時代を生きた孤高の棋士

大矢東吉（おおや とうきち）は、文政9年（1826年）に武蔵国所沢新田（現在の埼玉県所沢市）に生まれ、明治25年（1892年）に没した江戸時代末期から明治時代の将棋指しです。幼名を久次郎といいました。

生涯

医師である父・笠原春圃の四男として生まれました。春圃は尾張藩に仕えていましたが、晩年は所沢に隠居しました。13歳で初段の腕前となり、16歳で「棋聖」と称えられた天野宗歩と対局しますが、全敗。この経験から奮起し、修行を重ね、在野の棋客としてその名を知られるようになりました。

幕府が滅亡し、明治維新を迎えた明治2年（1869年）、将棋界の再興を目指していた八代伊藤宗印と九代大橋宗与の招集に応じ、『百番出版校合会』に参加します。そこで、八代宗印と次期名人の座を争いますが、惜しくも敗れました。しかし、その後もその棋力は衰えることなく、明治10年（1877年）には東の大関七段、明治20年（1887年）には東の大関八段にまで上り詰めました。

「王手には所沢の東吉でも逃げる」という言葉が残るほど、卓越した棋力を持っていた大矢東吉。全盛期には八代伊藤宗印、小野五平と肩を並べるほどの実力者として知られていました。

人となり

大矢東吉は、侠客のような気質を持ち、豪放磊落で奇行も多かったといわれています。その破天荒な生き方は、多くの逸話を生み、人々に語り継がれています。しかし、晩年は妻子に先立たれるなど不遇な時期を過ごし、脳の病により亡くなったとされています。

将棋界への貢献

大矢東吉は、幕末から明治という激動の時代に、将棋界の発展に大きく貢献しました。名人位こそ獲得できませんでしたが、その実力は多くの棋士や将棋ファンに認められていました。彼の存在は、明治以降の将棋界に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

大内延介・天狗太郎『名匠の棋跡』（時事通信社、1980年）

外部リンク

埼玉ゆかりの偉人－大矢東吉
将棋の名人とうきち（所沢市観光協会）
将棋名人　ふたりの｢とうきち｣（所沢の足跡　～人物編～、所沢市所沢図書館）
* コトバンク

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