大神神社 (栃木市)

栃木県大神神社：歴史と伝統、そして歌枕「室の八嶋」

栃木県栃木市惣社町に鎮座する大神神社は、悠久の歴史と豊かな自然に抱かれた神社です。古くは「下野惣社大明神」、「惣社六所大明神」、「室八島惣社大明神」などと呼ばれ、下野国府の惣社として、地域の人々の信仰を集めてきました。その歴史は古く、律令時代に国府が置かれた際に、国府の鎮守社として創建されたと伝えられています。現在地である惣社町という地名も、この神社が国府の惣社であったことに由来すると言われています。

祭神と創建の伝承

主祭神は倭大物主櫛𤭖玉命（やまとおおものぬしくしみかたまのみこと）です。これは、奈良県桜井市にある大神神社からの分霊とされています。倭大物主櫛𤭖玉命は、『出雲国造神賀詞』では大物主神と同一視されており、崇神天皇の時代に疫病や天変地異を鎮めたとされる神です。『日本書紀』には、崇神天皇が倭大物主櫛𤭖玉命から神託を得て、大神神社の祭祀を始めた様子が詳細に記されています。

配祀神としては、木花咲耶姫命、瓊々杵命、大山祇命、彦火々出見命が祀られています。

創建の伝承では、崇神天皇の皇子である豊城入彦命が東国平定の際に、戦勝祈願と民衆の平安を祈念して、大和国磯城瑞籬宮の大三輪大神（大神神社）を勧請したのが始まりとされています。

歴史の変遷と現在の姿

平安時代中期の『延喜式神名帳』には「下野国都賀郡 大神社」として記載されており、この神社を指しているとする説が有力です。また、古代には国司が各国内の神社を巡拝していましたが、効率化のために各国の国府近くに総社を設けて、国内の神々を合祀するようになりました。大神神社は、下野国の総社としてその役割を担っていたと考えられています。下野国庁跡も神社の南方約2.8kmに位置しており、その歴史的な位置づけを裏付けています。

歴史の過程では、平将門の乱による被害や戦国時代の兵火による焼失など、幾多の困難を経験しました。しかし、その後、徳川家光からの寄進などもあり、1682年（天和2年）に現在の社殿が再建されました。明治時代以降も、郷社、神饌幣帛料共進神社、県社へと昇格し、1924年（大正13年）には社殿の大改修が行われています。

歌枕「室の八嶋」

境内には、古くから歌枕として知られる「室の八嶋」があります。これは池の中にある小さな島々で、万葉集を始めとする多くの和歌に詠まれ、その美しさや神聖さが歌われています。

これらの歌は、木花咲耶姫命の神話、思川の低湿地帯の景観、燃え上がる恋の炎など、様々な解釈がされています。松尾芭蕉もこの地を訪れており、『奥の細道』にその様子が記されています。境内には、芭蕉の句碑も建立されています。現在の「室の八嶋」は、杉木立の中に8つの小島と祠があり、庭園のような趣のある場所となっています。

境内と祭事

境内には、室の八嶋の他に多くの摂末社が祀られています。年間を通して様々な祭事が行われており、春季例大祭では流鏑馬も行われます。また、大神神社の神楽と鉾祭は栃木市指定無形民俗文化財に指定されています。

現代における大神神社

大神神社は、歴史的価値の高い建造物や境内林、そして豊かな自然環境を有する神社です。現在も地域の人々から厚い信仰を集め、多くの観光客も訪れています。その歴史と文化、そして自然を体感できる貴重な場所と言えるでしょう。

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