大西飛行場

大西飛行場：個人経営の飛行場が歩んだ歴史

群馬県館林市と邑楽郡邑楽町の境に位置していた大西飛行場は、全国でも稀な個人経営の飛行場として知られていました。開設から廃止まで、およそ40年にわたる歴史を刻み、その独特の運営方法や周辺環境、そして関連する興味深いエピソードの数々は、航空史における特異な存在として記憶されています。

飛行場概要と特徴

大西飛行場は、海抜65mの場所に位置し、600m×25mの簡易舗装された滑走路を有していました。運用時間は約8時間と限られており、主に日中帯の利用が中心でした。滑走路の特筆すべき点は、中央部を道路が横断していたため、航空機の離着陸時には遮断機が作動し、交通の安全が確保されていた点です。このユニークな設計は、飛行場の規模と周辺環境を反映したものでした。

歴史：陸軍飛行場から個人経営へ

大西飛行場の歴史は、太平洋戦争へと繋がる昭和13年（1938年）に遡ります。この地には、館林陸軍飛行場が建設され、熊谷陸軍飛行学校館林分教場として利用されていました。終戦により廃止された後、昭和39年（1964年）、飛行機愛好家である大西勇一氏によって、個人経営の飛行場として再出発を果たします。

昭和46年（1971年）には国から正式な飛行場設置の許可が下り、その後、新中央航空など複数の航空会社が利用していました。しかし、平成15年（2003年）12月、フライト数の減少や採算性の悪化を理由に供用が休止され、翌平成16年（2004年）3月31日、ついに廃止という決断が下されました。

大西飛行場と周辺環境

大西飛行場は、単なる飛行場としてだけでなく、地域社会とも密接に関わっていました。近隣には利根川が流れ、日本学生スポーツ・パラシュート連盟などの民間スカイダイビングクラブがセスナ機の離陸拠点として利用していました。スカイダイバーらは、利根川河川敷を落下地点としており、飛行場と自然環境が共存する光景が見られました。また、戦後も残された旧陸軍飛行場の滑走路は、平行誘導路として機能していましたが、実際にはほとんど使用されませんでした。

映画との関わりと大西勇一氏の功績

大西飛行場は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のロケ地としても使用されました。そのノスタルジックな雰囲気は、映画の世界観を彩る上で重要な役割を果たしました。さらに、大西勇一氏は、スバル1000のエンジンを流用した自作モーターグライダー『OX5 スバルプレン』を製作し、自作航空機に与えられる機体記号『JX』を最初に取得した人物でもあります。このモーターグライダーは現在、向井千秋記念子ども科学館に展示され、大西氏の情熱と技術の高さを物語っています。

跡地と現在

大西飛行場の跡地は、現在、日本運輸株式会社群馬営業所となっています。かつて航空機の活気と熱気に満ちていた地は、新たな姿で地域社会に貢献していると言えるでしょう。大西飛行場の歴史は、個人による情熱と努力、そして時代の変化を反映した貴重な記録であり、日本の航空史において特筆すべき存在として、これからも語り継がれるべきものです。

もう一度検索