大谷友右衛門 (6代目)

六代目 大谷友右衛門の生涯

六代目大谷友右衛門（おおたに ともえもん）は、1886年に東京の浅草で誕生し、大正から昭和戦前期にかけて歌舞伎界で活躍した名優です。本名は青木八重太郎で、屋号は明石屋、定紋は丸十、替紋は水仙丸です。友右衛門は、歌舞伎役者の中村鷺助を父に持ち、幼少期から歌舞伎の世界に親しみ、優れた才能を発揮しました。

芸能の道の始まり

友右衛門は、1891年に初舞台を踏む際には「中村翫兵衛」という名前で活動を開始しました。その後、名の変更を経て、多くの著名な役者と共演しながら成長していきました。1902年には「中村駒助」を襲名し、次第にその名声は高まり、1911年には「五代目中村東蔵」を襲名します。その後、1920年にかけて「六代目大谷友右衛門」として知られるようになります。

役者としての活動

友右衛門は、六代目尾上菊五郎の舞台で多くの主役を務め、特に丸本物や世話物と呼ばれるさまざまな演目に精通していました。彼の演じた役の中には、『菅原伝授手習鑑』の春藤玄番や、『神霊矢口渡』の頓兵衛などがあり、その演技は多くの観客に感動を与えました。彼は、役を的確に表現する能力と、当時の歌舞伎のスタイルを忠実に守りながらも、新たな風を吹き込む才能を持っていました。

職業人生の転機

大正10年に市村座が難しい状況に陥った際、吉右衛門の後釜として抜擢され、舞台を支える重要な役割を果たしました。市村座から松竹へと移籍した昭和2年以降も、友右衛門はその名声を維持し続けました。

最期と影響

彼の生涯の最後は悲劇的なものでした。1943年、巡業先の鳥取で発生した大地震により、楽屋が倒壊し、友右衛門は57歳でこの世を去ります。彼の死は、歌舞伎界に多大な影響を与え、葬儀では大谷宗家の継承が内定していたため、特別な儀式が行われました。

遺族とその後

友右衛門の弟には二代目中村福之丞が、子には四代目中村雀右衛門（七代目大谷友右衛門）が存在し、彼の遺志はその家系に引き継がれています。墓所は青山霊園に位置し、彼の偉業と影響力は歌舞伎界に今も根付いています。

大谷友右衛門は、歌舞伎の伝統を尊重しつつ、新しい表現に挑み続けた努力の人であり、その名は今でも多くの歌舞伎ファンに愛されています。

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