大谷羊太郎

大谷羊太郎：音楽からミステリーへ、多彩な人生を歩んだ作家

大谷羊太郎（おおたに ようたろう、1931年2月16日 - 2022年2月28日）は、日本の小説家、推理作家として知られています。本名は、大谷一夫。大阪府東大阪市で生まれ、埼玉県浦和市（現さいたま市浦和区）で育ちました。埼玉県立浦和高等学校を卒業後、慶應義塾大学国文科に進学しましたが、中退しています。

幼い頃から、小説家を目指していた母親の影響で新聞小説に親しみ、文学に囲まれた環境で育ちました。しかし、当初は自身は小説家になることを考えていなかったといいます。大学時代は純文学に傾倒し、その後、戦後のアメリカ音楽に魅せられ、スチールギターを演奏するようになりました。

父親の事業の失敗を機に、音楽の世界へ本格的に進出。プロミュージシャンとしてデビューし、芸能界で活動を始めます。「秀和プランニング」では、克美しげるのマネージャーを務めるなど、華やかな芸能界での経験を積みました。

しかし、大谷は「浮草稼業」からの脱却を志し、小説創作へと転向。江戸川乱歩賞に応募するようになります。1966年には『四つのギター』（本名で応募）が、1968年には『死を運ぶギター』（後に『美談の報酬』と改題）が、同賞の候補作となりました。1969年には『虚妄の残影』も候補作となり、着実に作家としての道を歩み始めます。そして、1970年、『殺意の演奏』で第16回江戸川乱歩賞を受賞。作家としての地位を確立しました。

当時、社会派ミステリーが主流で、トリック重視の作品は冷遇される傾向がありましたが、大谷は森村誠一、斎藤栄らと共に、謎解きを重視した作品を発表し、注目を集めます。その後はサスペンス小説へと領域を広げ、晩年は旅情ミステリーを多く執筆しました。

大谷の作品の特徴として、芸能界での経験を生かした、芸能界を舞台にした密室ものが挙げられます。これにより、多くの読者から支持を得ました。代表的な作品には、名探偵・八木沢警部補が登場するシリーズや、『真夜中の殺意』『悪人は三度死ぬ』などがあります。また、共同覆面作家・鷹見緋沙子の一員（草野唯雄、天藤真と共作）としても活動していました。

作家活動以外にも、さいたま文藝家協会賞選考委員、さいたま市スポーツ文学賞（旧浦和スポーツ文学賞）選考委員を長年務めるなど、地元文化への貢献も果たしました。

2022年2月28日、肺炎のため91歳で逝去しました。数々のミステリー小説を世に残し、その才能と経験に裏打ちされた作品は、多くの読者に愛され続けています。彼の作品は、時代を超えて人々の心を捉え、ミステリー文学史に大きな足跡を残しました。多様なジャンルに挑戦し、常に新しい表現を探求した大谷羊太郎の業績は、後世に語り継がれるでしょう。

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