大郷村 (鳥取県)

大郷村の歴史と特徴

大郷村（おおさとそん）は、かつて鳥取県気高郡に存在した自治体であり、1896年まで高草郡に属していました。現在の鳥取市によってその地域は覆われていますが、大郷村の名残は色濃く残っています。

地理と地域の特徴

大郷村は、湖山池の南西岸に位置し、湖山川の下流の沖積地で発展しました。現在の鳥取市大畑、金沢、福井、松原、六反田にかつての村の地域があたります。歴史的には、古くは刑部郷と呼ばれ、江戸時代には高草郡大谷保に含まれる10の村が存在し、大谷村や岩本村、福井村などがその名に連なっていました。

この地域は主に農業が盛んで、約8割が農家であったことから、米や麦の生産地として知られています。さらに、農業に従事する人々の中には、副業として漁業を行う者も多く、湖山池からは鯉や鮒、白魚、糠鰕、鰻などが年間を通して多く捕獲されていました。これらの漁業は地域経済にも寄与し、漁獲量は千貫以上に達したとの記録があります。

地名の由来は、金沢村の「金」が多く入ることに起因し、このことから「金の沢」という名称が生まれました。江戸時代には、米が舟で賀露まで運ばれ、そこでさらに鳥取や大坂方面に輸送されるなど、経済的にも重要な役割を果たしました。

沿革

大郷村の歴史は、明治時代への移行と共に発展を見せました。1877年には大谷村と岩本村が合併して金沢村が成立し、その後の1886年には伏野村外6ヶ村の戸長役場が、福井村を管轄する形で設置されました。1889年には町村制が施行されると、松原村や金沢村などが合併し、大郷村が誕生します。この村は旧村名を引き継ぎ、金沢村に役場が置かれました。

1896年には郡制の施行により、気高郡が設立され、大郷村もこの郡に組み込まれました。1946年には、村の役場が松原に移設されますが、1953年には鳥取市に編入され、大郷村はその運命を終えました。

教育と交通

大郷村には、教育機関も存在しました。大郷村立の小学校は後に鳥取市立湖南小学校に統合され、現在は湖南学園として知られています。また、鳥取県気高郡学校組合立湖南中学校もあり、こちらは吉岡村に位置していましたが、後に鳥取市立湖南中学校に改称され、同様に湖南学園として統合されました。

交通面では、旧国道が湖山池の南側を迂回し、松原や金沢を経て御熊峠を超えて宝木に至っていました。これにより、地域住民は他の地域へのアクセスが可能でした。

文化と遺跡

大郷村には防己尾城跡があり、地域の歴史を伝える貴重な遺産です。この城跡は、かつて地域の支配力を象徴する場所であり、地域住民の生活にも大きな影響を与えていたことでしょう。

現在では、地域の変遷を感じることができるこの場所は、鳥取市の一部として観光名所としても知られています。大郷村の歴史を通して、地域の文化や経済がどのように発展してきたのかを知ることができる貴重な資源となっています。

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