大野右仲

大野右仲（おおの うちゅう）

大野右仲は、天保7年（1837年）に唐津藩士の長男として江戸に生まれました。幼名は又七郎といい、昌平坂学問所で学んだ後、幕末の動乱期に新選組隊士として活躍しました。戊辰戦争では、旧幕府軍の一員として各地を転戦し、箱館戦争では土方歳三の側近として重要な役割を果たしました。

幕末の動乱

戊辰戦争が勃発すると、大野は小笠原長行に従って会津へ入りました。この際、松川精一と名乗り、旧友である越後長岡藩の家老、河井継之助のもとに身を寄せました。しかし、長岡藩が新政府軍との戦闘に巻き込まれると、大野は土方歳三を訪ねて戦況を調査し、仙台で新選組に入隊しました。その後、榎本武揚率いる艦隊と合流して蝦夷地へ渡り、箱館政権下では陸軍奉行並の職に就いた土方の部下として活躍しました。

箱館戦争での活躍

箱館戦争では、大野は二股口の戦いから箱館総攻撃まで、土方歳三の補佐役を務めました。特に、千代ヶ岡陣屋で土方歳三と合流し、一本木関門へ向かった際の記録は、著書『函館戦記』に詳しく記されています。箱館港での旧幕府軍の勝利後、土方の命令で弁天台場方面へ進撃しましたが、敗走する兵士の様子を見て千代ヶ岡陣屋へ引き返したところ、土方歳三の戦死を知らされました。

土方歳三の戦死

大野は土方歳三の最期について、『函館戦記』で詳細に記述しています。土方歳三が戦死した際、大野は同役の大島寅雄や安富才助からその事実を知らされたとされています。また、五稜郭へ来た相馬主計に土方の死を伝えたとも言われています。大野は弁天台場で新選組隊士と共に降伏したという説もありますが、異論も存在します。

明治維新後の人生

降伏後、大野は新政府に出仕し、久美浜県や豊岡県で権参事を務めました。その後も千葉県、長野県、青森県などの要職を歴任し、地方行政に貢献しました。また、自らの経験を基に『函館戦記』を著し、箱館戦争の貴重な記録を後世に残しました。

死去

大野右仲は、明治44年（1911年）に東京の自宅で脳充血により亡くなりました。享年76歳。墓所は谷中霊園の天王寺墓地にあります。

その他

大野右仲は、幕末の激動期を生き抜いた人物であり、新選組の一員として、また地方官僚として、日本の歴史に名を刻みました。彼の著した『函館戦記』は、箱館戦争の実態を知る上で貴重な資料となっています。

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