大間成文抄

大間成文抄について

概要

大間成文抄（おおまなりぶみしょう）は、鎌倉時代初期の著作で、九条良経が執筆した除目に関する歴史的資料です。全10巻から成るこの作品は、主に1194年から1197年の間に書かれたと考えられています。除目とは、任官の過程を指し、各種の官職の任命に関する先例を体系的に分類・整理しています。

書名の多様性

書名については、興味深い点があります。彰考館本や内閣文庫本を含む一般に流布している本では『除目大成抄（じもくたいせいしょう）』と称されますが、九条家の伝承を受けている宮内庁書陵部所蔵の古い写本には「大間成文抄」と記されています。このことから、後者が原本に近い書名であると考えられています。実際、三条西実隆の日記にも「大間成文抄」という名が見られます。

内容の構成

この書は、任官の事由に基づいて分類されており、年給、臨時給、成功、官司の挙奏、巡任、兼国などの項目に分かれています。各項目には、具体的な任官例が挙げられ、それに関連する成文や注釈情報が追加されています。特に巻1から5には外官が、巻6から9には京官に関する内容が記載されており、巻10は秋除目や大間書の訂正方法などの解説を含んでいます。

大間書と成文

「大間書」とは、毎年行われる除目に際し、欠員のある官職の名称を事前に記載した文書です。この中に任官者の氏名が追記されていく形式が取られます。一方で「成文」は、任官を希望する者が除目前に提出する申文のうち、願いが叶ったケースを指します。九条本では、項目ごとの人名や成文などが異なる紙に記されており、それぞれの内容が順に貼り継がれていることから、原本の様態を忠実に表現していると考えられています。

執筆経緯

本書の執筆は、九条良経が摂関家の嫡子として大臣就任を視野に入れていた1194年秋ごろに始まったとされます。彼は除目に関連する資料の収集を行い、翌年の正月には8巻をほぼ完成させ、父に見せました。しかし、同年11月には九条家は政変により失脚しました。良経はこの後も自らの経験と先例を踏まえ、書を改訂し続けたとされています。

諸本と流布

現存する巻子本や冊子本については、教実が1227年以降に書き写した九条本や、三条西実隆が1497年に元本をもとに再構成した実隆本などがあります。九条本は巻5以降が未完となっており、実隆本では欠けた部分が補完されています。これにより、実隆本は九条本の流布の基盤ともなっています。

影響と引用

大間成文抄は除目に関する重要な史料として位置づけられ、後世の文献においても多く引用されています。例えば、『魚魯愚鈔』など他の著作でも本書の内容が参照されることが多く、その影響力が伺えます。

参考文献

本書の詳細な研究や校訂は、さまざまな著者によって行われており、特に吉田早苗の研究が評価されています。また、オンラインでも多くの資料がアクセス可能で、研究の助けとなる情報が提供されています。

大間成文抄は、任官の歴史を知る上で非常に貴重な資料であり、今後の研究にも重要な影響を与えることでしょう。

もう一度検索