大関増裕

大関 増裕について

大関 増裕（おおぜき ますひろ、天保8年12月9日〈1838年1月4日〉 - 慶応3年12月9日〈1868年1月3日〉）は、江戸時代の末期に活躍した黒羽藩の大名です。彼は下野国の黒羽藩の15代藩主であり、藩政や軍制の改革に取り組んだ重要な人物とされています。

生い立ちと初期の経歴

増裕は遠江国横須賀藩主の西尾忠善の三男として生まれました。その後、文久元年（1861年）には大関増徳の養子となります。10月には藩主としての地位を継ぎ、その12月には江戸幕府第14代将軍・徳川家茂に御目見えを果たしました。この際、彼は従五位下および肥後守に叙任され、将軍からの認知を得ました。

暫くして、文久2年（1862年）4月には講武所の奉行に任じられ、続いて陸軍奉行としても活躍します。彼は幕府の軍制改革に貢献しようとしたものの、病気により文久3年（1863年）には辞任を余儀なくされました。

藩政改革と功績

辞任後の増裕は、同年5月に藩内で全権を委任され、西洋式の砲術を導入するなどして藩政改革に着手しました。慶応元年（1865年）には新設された海軍奉行に就任し、さらには若年寄格、そして慶応3年（1867年）1月には若年寄に昇進しました。しかし、同年12月、狩猟中に猟銃の事故で命を落としてしまいます。享年は31歳でありました。

増裕には5人の息子と6人の娘がいましたが、すでに全て早世しており、彼の死後、養子の増勤が急に跡を継ぐこととなりました。増裕の教育への貢献も忘れてはならず、彼は作新学院の前身である藩校作新館を創設しました。この学校名は著名な幕臣、勝海舟が命名したとも言われています。

増裕の死と其妻於待の方

増裕の没後、彼の妻於待の方（待子）についても注目されています。彼女はアメリカの日刊紙『Daily Alta California』に1868年9月20日付で記載されており、彼女が奥羽越列藩同盟軍の一員として戦ったとの記述があります。しかし、この記録は日本側の史料では裏付けられることはありません。

於待の方は、「江戸町で異国の真似をする馬鹿の大関」と揶揄されるほどの烈女として知られていますが、増裕の死に関しては様々な説がささやかれています。公には事故死とされていますが、自殺や他殺の噂も流れ、事件性が疑われることもあるようです。

特に、外様大名でありながら徳川家に忠義を尽くしてきた増裕と、変わりつつある家臣団との関係性には複雑さがありました。増裕は横須賀藩からの養子であったため、藩内での立場も難しいものであったと考えられます。

もし於待の方が戦に参加していたのが事実であれば、彼女は夫に対する復讐心を抱いていたことになり、他殺説がより一層強まるかもしれません。しかし、確かな証拠はなく、すべては語られる噂のレベルに留まっています。

系譜

増裕の系譜に関しては、実父が西尾忠宝、養父が大関増徳となります。結婚相手には、正室にお鉱（増儀の娘）、継室に侍子（増徳の養女）がいました。子供たちに関しては、全て早世したため、藩の後継者問題も深刻な課題でありました。養子として増勤が後を継いだことは、藩の存続に大きく寄与したと言えるでしょう。

このように、大関増裕は短い生涯の中で多くの改革に取り組み、江戸時代末期の激動の中で重要な役割を果たした人物でありました。

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