大阪市電天王寺車庫

大阪市電天王寺車庫は、1912年（明治45年）に着工し、同年（大正元年）11月に大阪市南区南霞町（現在の浪速区恵美須東3丁目）に開設されました。この車庫は、当時の大阪市電における重要な拠点の一つでした。

構造と規模の変遷

開設当初、天王寺車庫は6棟の建屋で構成され、単車210両を収容できる規模でした。その後、市電の輸送力増強に伴い、1915年（大正4年）に1棟が増築され、さらに1920年（大正9年）には九条車庫から2棟が移築されました。これにより、収容能力は340両にまで拡大しました。

重要な路線と配属車両

天王寺車庫が受け持つ運転系統は、市電の中でも特に重要な路線でした。そのため、1919年（大正8年）頃の4車庫時代には、他の車庫が四輪車中心であったのに対し、501形や601型といった当時の最新鋭車両が優先的に配置されました。戦後もその重要性は変わらず、大阪市電で最初に新造された1711型や、準PCCカーとも呼ばれた3001型50両のうち30両が配属されるなど、最後まで大阪市電の花形車庫としての役割を担いました。

廃止と跡地の変遷

1967年（昭和42年）1月16日、大阪市電の路線縮小に伴い、天王寺車庫は廃止されました。跡地は、一時的に大阪市交通局の施設や大阪市営バスの操車場として利用されましたが、1997年（平成9年）7月18日には、大型遊具や娯楽施設、商業施設を組み合わせた都市型立体遊園地「フェスティバルゲート」として生まれ変わりました。

名称について

正式名称は「天王寺車庫」でしたが、「霞町車庫」と呼ばれることも多くありました。天王寺公園には近接しているものの、一般的に「天王寺」が指す四天王寺や天王寺駅からは距離があります。また、所在地は旧東成郡天王寺村ではなく西成郡今宮村の一部であったため、1925年（大正14年）の南区分区の際にも、天王寺区ではなく浪速区に含まれました。

天王寺車庫は、大阪市電の歴史を語る上で欠かせない存在であり、その跡地は都市の変遷を今に伝えるランドマークとなっています。

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