大阪府立泉尾工業高等学校
大阪府立泉尾工業高等学校は、大阪市大正区泉尾に所在する公立の工業高等学校です。この学校は、その長い歴史の中で、大阪市立から大阪府立へと移管されるなど、数々の変遷を経験してきました。
元々は大阪市立の学校として創立されましたが、2022年度に大阪府に移管され、現在の大阪府立泉尾工業高等学校となりました。全日制課程の工業高等学校として、機械科、電気科、工業化学科、セラミック科、そして全国でも珍しいファッション工学科の5学科を設置しています。特にファッション工学科は、生徒の約9割を女子が占めるという特徴があります。
この学校の歴史は、1921年に旧制の大阪市立泉尾工業学校として設置認可されたことに始まります。翌1922年には授業が開始され、その後新制高等学校として大阪市立泉尾工業高等学校となりました。かつては、夜間定時制課程の大阪市立泉尾第二工業高等学校と校舎を共有していましたが、同校は2004年に閉校しています。
1921年9月13日、5年制の大阪市立泉尾工業学校の設立が認可されました。大阪市立としては2番目に設置された工業学校であり、当時の大阪市の方針により、既存の大阪市立工業学校（現在の大阪府立都島工業高等学校）が機械・電気などの物理系に重点を置いていたのに対し、化学系を中心とする工業学校として臨海部に設置されました。
設立当初は紡織科、色染科、窯業科の3科が置かれ、1922年3月には応用化学科が増設されました。1922年4月には、西区市岡（現在の港区磯路3丁目付近）の大阪市立市岡商業学校（のちの大阪市立市岡商業高等学校）を仮校舎として授業を開始し、同年10月20日には現在地に校舎が完成し移転しています。この10月20日が創立記念日となっています。
1923年12月には、大阪市立工業学校（現在の大阪府立都島工業高等学校）から応用化学科が移管され、在校生が編入しました。太平洋戦争の影響で、1944年には4年制に短縮され学科の再編が行われましたが、終戦直後の1946年には再び5年制に戻りました。また、同年に廃校となった大阪市立酉島工業学校の応用化学科を合併しています。
学制改革により新制中学校が発足したことに伴い、1947年には併設中学校が過渡的に設置され、旧制泉尾工業学校の2年生と3年生が移行しました。また、廃止された旧制大阪市立安治川女子工業学校の学校事務を継承する形となりました。
1948年には新制高等学校制度の発足に伴い、大阪市立泉尾工業高等学校へと改編されました。新制高等学校発足当初は、紡織科、色染科、窯業科、工業化学科、化学機械科の5学科が設置されました。新制高等学校への移行で名目上は男女共学となりましたが、実際には旧制女子学校との生徒交流は行われず、実質的な男女共学化は1963年に初めて女子生徒が入学した時からとなりました。この女子生徒が受験願書を提出した際、係員から「何か間違いではないか」と言われたという逸話が『大正区史』に記されています。
1963年には電気科が新設され、既存学科の改称や、2つの学科を統合してファッション工学科を設置する改編（1993年）などを経て現在に至ります。
2010年代になると、大阪市立の高等学校全校を大阪府に移管する構想が浮上しました。2019年9月には、大阪市と大阪府の間で高等学校の府への移管に関する基本合意が明らかになり、2020年12月には大阪市会と大阪府議会で移管関連の条例が可決されました。これにより、大阪市立の全ての高等学校は2022年度から大阪府に移管されることとなり、泉尾工業高等学校も2022年4月より大阪府立泉尾工業高等学校と改称されました。
大阪市高等学校教育審議会は、2020年8月4日に「Society 5.0で実現する社会に求められる大阪の産業人材育成を担う新たな工業系高等学校の在り方について（第13次答申）」を発表しました。この答申では、大阪市立の工業系高等学校の改革の方向性が提言され、泉尾工業高等学校については、大阪市立生野工業高等学校および大阪市立東淀工業高等学校と統合し、新たな工業高等学校を設置する再編構想が打ち出されました。この統合再編は、2022年度の府立移管後に具体化される見通しとなっています。
1921年9月13日：大阪市立泉尾工業学校設立認可（5年制）。
1922年4月：大阪市立泉尾工業学校として開校・仮校舎で授業開始。
1922年10月22日：現在地に移転。
1926年：敷地内に夜間課程の大阪市立泉尾工業専修学校（のち大阪市立泉尾第二工業高等学校）が開校。
1944年：4年制へ短縮。
1946年：5年制へ復帰。酉島工業学校応用化学科を合併。
1948年：学制改革により大阪市立泉尾工業高等学校となる。紡織科・色染科・窯業科・工業化学科・化学機械科の5学科を設置。
1949年：紡織科を繊維工業科に、色染科を色染工業科にそれぞれ名称変更。
1950年9月：ジェーン台風で校舎被害。
1963年：初めて女子生徒が入学し、男女共学が実質的に始まる。
1963年：電気科を新設。
1979年：化学機械科を機械科に名称変更。
1988年：窯業科をセラミック科に名称変更。
1993年：繊維工業科・色染工業科を統合し、ファッション工学科へ改編。
2022年：大阪府に移管。大阪府立泉尾工業高等学校に改称。
大阪シティバス 泉尾4丁目バス停からすぐ
大阪シティバス 南泉尾バス停から西へ約300m
大阪環状線・Osaka Metro長堀鶴見緑地線 大正駅より南西へ約2km
山下俊彦 - 元松下電器産業社長
村上三島 - 書家
長尾浩志 - 元バレーボール選手、元プロレスラー
田中健二 - 元プロ野球選手
西村美紀 - プロボウラー
高橋真琴 - イラストレーター
出花崇太郎 - 柔道家、総合格闘家
日本の工業高等学校一覧
大阪府高等学校一覧
大阪市立泉尾工業高等学校『大阪市立泉尾工業高等学校創立80周年記念誌』2002年。
大阪都市協会『大正区史』大正区制施行五十周年記念事業委員会、1983年。
大阪府立泉尾工業高等学校
大阪市立泉尾工業高等学校 - ウェイバックマシン
大阪市立泉尾工業高等学校同窓会・大阪白水会
概要
元々は大阪市立の学校として創立されましたが、2022年度に大阪府に移管され、現在の大阪府立泉尾工業高等学校となりました。全日制課程の工業高等学校として、機械科、電気科、工業化学科、セラミック科、そして全国でも珍しいファッション工学科の5学科を設置しています。特にファッション工学科は、生徒の約9割を女子が占めるという特徴があります。
この学校の歴史は、1921年に旧制の大阪市立泉尾工業学校として設置認可されたことに始まります。翌1922年には授業が開始され、その後新制高等学校として大阪市立泉尾工業高等学校となりました。かつては、夜間定時制課程の大阪市立泉尾第二工業高等学校と校舎を共有していましたが、同校は2004年に閉校しています。
沿革
旧制泉尾工業学校時代
1921年9月13日、5年制の大阪市立泉尾工業学校の設立が認可されました。大阪市立としては2番目に設置された工業学校であり、当時の大阪市の方針により、既存の大阪市立工業学校（現在の大阪府立都島工業高等学校）が機械・電気などの物理系に重点を置いていたのに対し、化学系を中心とする工業学校として臨海部に設置されました。
設立当初は紡織科、色染科、窯業科の3科が置かれ、1922年3月には応用化学科が増設されました。1922年4月には、西区市岡（現在の港区磯路3丁目付近）の大阪市立市岡商業学校（のちの大阪市立市岡商業高等学校）を仮校舎として授業を開始し、同年10月20日には現在地に校舎が完成し移転しています。この10月20日が創立記念日となっています。
1923年12月には、大阪市立工業学校（現在の大阪府立都島工業高等学校）から応用化学科が移管され、在校生が編入しました。太平洋戦争の影響で、1944年には4年制に短縮され学科の再編が行われましたが、終戦直後の1946年には再び5年制に戻りました。また、同年に廃校となった大阪市立酉島工業学校の応用化学科を合併しています。
泉尾工業高等学校時代
学制改革により新制中学校が発足したことに伴い、1947年には併設中学校が過渡的に設置され、旧制泉尾工業学校の2年生と3年生が移行しました。また、廃止された旧制大阪市立安治川女子工業学校の学校事務を継承する形となりました。
1948年には新制高等学校制度の発足に伴い、大阪市立泉尾工業高等学校へと改編されました。新制高等学校発足当初は、紡織科、色染科、窯業科、工業化学科、化学機械科の5学科が設置されました。新制高等学校への移行で名目上は男女共学となりましたが、実際には旧制女子学校との生徒交流は行われず、実質的な男女共学化は1963年に初めて女子生徒が入学した時からとなりました。この女子生徒が受験願書を提出した際、係員から「何か間違いではないか」と言われたという逸話が『大正区史』に記されています。
1963年には電気科が新設され、既存学科の改称や、2つの学科を統合してファッション工学科を設置する改編（1993年）などを経て現在に至ります。
府立移管へ
2010年代になると、大阪市立の高等学校全校を大阪府に移管する構想が浮上しました。2019年9月には、大阪市と大阪府の間で高等学校の府への移管に関する基本合意が明らかになり、2020年12月には大阪市会と大阪府議会で移管関連の条例が可決されました。これにより、大阪市立の全ての高等学校は2022年度から大阪府に移管されることとなり、泉尾工業高等学校も2022年4月より大阪府立泉尾工業高等学校と改称されました。
再編構想
大阪市高等学校教育審議会は、2020年8月4日に「Society 5.0で実現する社会に求められる大阪の産業人材育成を担う新たな工業系高等学校の在り方について（第13次答申）」を発表しました。この答申では、大阪市立の工業系高等学校の改革の方向性が提言され、泉尾工業高等学校については、大阪市立生野工業高等学校および大阪市立東淀工業高等学校と統合し、新たな工業高等学校を設置する再編構想が打ち出されました。この統合再編は、2022年度の府立移管後に具体化される見通しとなっています。
年表
1921年9月13日：大阪市立泉尾工業学校設立認可（5年制）。
1922年4月：大阪市立泉尾工業学校として開校・仮校舎で授業開始。
1922年10月22日：現在地に移転。
1926年：敷地内に夜間課程の大阪市立泉尾工業専修学校（のち大阪市立泉尾第二工業高等学校）が開校。
1944年：4年制へ短縮。
1946年：5年制へ復帰。酉島工業学校応用化学科を合併。
1948年：学制改革により大阪市立泉尾工業高等学校となる。紡織科・色染科・窯業科・工業化学科・化学機械科の5学科を設置。
1949年：紡織科を繊維工業科に、色染科を色染工業科にそれぞれ名称変更。
1950年9月：ジェーン台風で校舎被害。
1963年：初めて女子生徒が入学し、男女共学が実質的に始まる。
1963年：電気科を新設。
1979年：化学機械科を機械科に名称変更。
1988年：窯業科をセラミック科に名称変更。
1993年：繊維工業科・色染工業科を統合し、ファッション工学科へ改編。
2022年：大阪府に移管。大阪府立泉尾工業高等学校に改称。
交通
大阪シティバス 泉尾4丁目バス停からすぐ
大阪シティバス 南泉尾バス停から西へ約300m
大阪環状線・Osaka Metro長堀鶴見緑地線 大正駅より南西へ約2km
出身者
山下俊彦 - 元松下電器産業社長
村上三島 - 書家
長尾浩志 - 元バレーボール選手、元プロレスラー
田中健二 - 元プロ野球選手
西村美紀 - プロボウラー
高橋真琴 - イラストレーター
出花崇太郎 - 柔道家、総合格闘家
関連項目
日本の工業高等学校一覧
大阪府高等学校一覧
参考文献
大阪市立泉尾工業高等学校『大阪市立泉尾工業高等学校創立80周年記念誌』2002年。
大阪都市協会『大正区史』大正区制施行五十周年記念事業委員会、1983年。
外部リンク
大阪府立泉尾工業高等学校
大阪市立泉尾工業高等学校 - ウェイバックマシン
大阪市立泉尾工業高等学校同窓会・大阪白水会
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