大阪電気軌道四条畷線

四条畷線とは

四条畷線は、かつて近畿日本鉄道（近鉄）のルーツである大阪電気軌道（大軌）が建設を計画していた鉄道路線です。しかし、その計画は実現せず、未成線として歴史の中に埋もれています。本記事では、この幻の路線の計画から頓挫までの経緯を詳しく解説します。

計画の始まり

1914年（大正3年）に現在の近鉄奈良線を開業させた大軌は、その後、畝傍線（現・橿原線）など南東方面へと路線を拡大していきました。一方で、北河内地域への進出も検討しており、1922年（大正11年）6月には天満橋筋四丁目から四条村寺川、そして鷲尾（現在の石切駅付近）までの敷設特許を取得しました。しかし、当時は他の路線の建設や買収に注力していたため、四条畷線の建設は一旦先送りとなりました。

計画の具体化と着工

1929年（昭和4年）6月、東大阪電鉄に大阪森町（森ノ宮）から四条畷、奈良間までの敷設免許が下りたことで、事態は急展開を迎えます。この免許線は、計画中の四条畷線と並行し、既存の奈良線とも競合する可能性があったため、大軌は自社の権益を守るべく、四条畷線の建設を具体化させ、工事に着手することになりました。

1月には、終点地を鷲尾駅から額田駅に変更。これは、鷲尾駅が地形的に不便であったため、路線を分岐させやすい場所に変更したためです。同年7月には、下ノ辻（現在の鶴見区今福鶴見付近）から寺川までの7.8km区間の工事が始まりました。さらに、翌年12月には蒲生から下ノ辻までの1.3km区間の免許を取得し、城北運河（鶴見運河）を渡る橋脚の下部工事も開始。この橋脚は後に道路橋となり、「大喜橋」と名付けられました。

また、当初の起点地であった天満橋筋四丁目を桜ノ宮（現在の帝国ホテル大阪付近）に変更しました。これは、大阪市電の乗り入れがなくなったため、京阪電気鉄道の梅田線計画を一部利用する形で、京阪本線の蒲生信号所に隣接して大軌の蒲生駅を設け、将来的に梅田駅や天満橋駅へ乗り入れるという計画でした。

工事の中断

鉄道省が片町線の電化計画を進めていた頃、大軌の四条畷線建設も進められていましたが、関東大震災の影響で予算が削減され、電化計画が凍結されました。1932年（昭和7年）に片町線の電化が完成し、電車が頻繁に運行されるようになると、四条畷線の建設意義は薄れてきました。さらに、四条畷から寺川、瓢箪山、柏原間では大軌バスの運行が始まり、競合路線となる東大阪電鉄の計画も贈収賄事件によって頓挫したため、1934年（昭和9年）以降、工事は凍結されることになりました。

蒲生から寺川までの9.1km区間の路盤はほぼ完成していましたが、この路盤は大阪市に売却され、産業道路（現在の阪奈道路）に転用されました。大軌は、1940年（昭和15年）からこの道路を利用してバス路線を運行し始めましたが、1942年（昭和17年）に四条畷線の特許を失効させました。

その後の影響

四条畷線の計画は、その後の交通網にも影響を与えました。開設されたバス路線は、長年近鉄バスが運行していましたが、2017年3月末に大阪市内から大東市までの路線が休止となりました。大阪市内区間は、現在、大阪シティバス36号系統がほぼ並行して運行しています。また、京橋から横堤方面は、1990年に開業した地下鉄長堀鶴見緑地線が代替となっています。

幻のルート

四条畷線の計画ルートは以下の通りです。

桜ノ宮（当初計画では天満橋筋四丁目）
蒲生
今福
下ノ辻
横堤
諸口
安田
大東新田
赤井
住道
深野
寺川
善根寺
石切本町
額田（当初は善根寺から東へカーブして鷲尾駅（後に孔舎衛坂駅、1964年廃止）へ向かう予定でした）

蒲生駅は、京阪本線のホームに隣接して1面2線のホームを設け、連絡線を設けて天満橋方面への乗り入れを計画していました。住道付近は、国鉄住道駅のやや北側を通る予定でした。

関連事項

大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線
* 大阪市営地下鉄中央線

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