大隊区

大隊区

大隊区（だいたいく）は、明治21年（1888年）から明治29年（1896年）まで大日本帝国陸軍が国内に設けた軍事的な管轄区域の一つです。その主な役割は、担当区域内での徴兵や予備役・後備役将兵の召集、および区域内に居住する予備役・後備役将校やそれに相当する官吏に関する各種届出を取り扱うことでした。

概要と創設経緯

明治21年（1888年）、鎮台廃止と師団創設に伴い、兵員確保のため鎮台の管轄区域を分割して設置されました。同年5月制定の「大隊区司令部条例」に基づき、各地に事務を執る大隊区司令部が置かれ、所在地の地名が冠されました。複数の大隊区（通常4つ）で一つの旅管を構成。具体的な管轄区域は、明治21年5月公布の「陸軍管区表」で定められ、所属師管・旅管が指定されました。必要に応じ、警備隊区も設置されました。

変遷と廃止

制度期間中にも区域変更がありました。明治23年（1890年）5月には、宮津大隊区が福知山に改組、八代大隊区は廃止され鹿児島・熊本大隊区に編入、大分大隊区が新設されました。

明治27年（1894年）10月には、北海道に新たに札幌、函館、空知太、天塩、根室、釧路、十勝、浦河の各大隊区が設置され、その所属師管・旅管も定められました。

大隊区制度は約8年間存続し、明治29年（1896年）3月制定の「連隊区司令部条例」により、同年4月1日をもって「連隊区」へと改称・再編されました。多くは大隊区の名称や区域を引き継ぎましたが、一部は廃止されました。

連隊区に引き継がれなかった大隊区

1896年の連隊区移行時に廃止された大隊区がありました。

八代大隊区

1888年5月設置。「陸軍管区表」により熊本県南部や鹿児島県の一部を管轄。1890年5月20日の条例改正で廃止され、旧区域は熊本大隊区と鹿児島大隊区に編入されました。

空知太大隊区

1894年10月19日、北海道に新設。「陸軍管区表」では石狩国北部・空知国一部などを管轄。1896年4月1日の大隊区廃止に伴い、旧区域は札幌連隊区に編入。

天塩大隊区

1894年10月19日、北海道に新設。「陸軍管区表」では天塩国・北見国一部などを管轄。1896年4月1日の大隊区廃止に伴い、旧区域は札幌連隊区に編入。

釧路大隊区

1894年10月19日、北海道に新設。「陸軍管区表」では釧路国南部などを管轄。1896年4月1日の大隊区廃止に伴い、旧区域は根室連隊区に編入。

浦河大隊区

1894年10月19日、北海道に新設。「陸軍管区表」では日高国全域などを管轄。1896年4月1日の大隊区廃止に伴い，旧区域は十勝連隊区に編入。

大隊区は、明治期の徴兵・召集体制の基盤として機能し、後に連隊区へと発展解消された地方管区制度でした。これは、当時の国家総動員体制構築に向けた軍事組織変遷の一例と言えます。

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