大館城 (陸奥国)

大館城は、現在の福島県いわき市内に位置していた、室町時代から戦国時代にかけて存在した日本の城です。別称として「大館」とも呼ばれ、2017年（平成29年）5月1日には、その歴史的な価値から「大館城跡」としていわき市の史跡に指定されました。

別称

築城された当時は「大館」と呼ばれていましたが、16世紀初頭に城の周辺地域が「平」という地名で知られるようになると、「平城」あるいは「平大館」とも称されるようになったと考えられています。さらに、江戸時代に築かれた磐城平城と区別するため、1980年代後半からは「飯野平城」という名称が用いられることも多くなっています。これらの別称は、時代の変遷や後世の便宜によって使い分けられてきたと言えます。

沿革

築城とその初期

大館城の正確な築城者や築城された年代は明らかになっていません。ただし、岩城氏（海道平氏の庶流）の白土隆弘（岩城常朝）が築いたとする伝承があり、これが正しければ14世紀後半から15世紀初頭にかけて築城されたと考えられます。また、文安4年（1447年）10月20日付の「刑部大輔昌隆押書」という古文書に「大館」の名が見えることから、城が築かれたのはこの文書が作成された時期よりも以前であることは確実です。自治体資料や観光案内などで文明15年（1483年）築城とする説が見られますが、これは岩城氏の惣領や当主がこの城を居城とするにあたり、増改築を行った時期などが誤って伝えられた可能性が高いと考えられています。

岩城氏の居城化

大館城が岩城氏の惣領や当主の本拠地となった時期についても諸説が存在します。一つは、白土隆弘の孫にあたり、嘉吉の変後の内紛を制して岩城氏一族の惣領となった岩城隆忠の代とする説です。また、隆忠の孫で、浜通り南部における戦国大名へと成長しつつあった岩城常隆が、文明15年（1483年）に居城を「白土」から当地へ移したとする説も見られます。さらに、隆忠の子で常隆の父にあたると推定される岩城親隆の代とする説もあります。

居城から廃城へ

常隆以降は、大館城は代々の岩城氏当主の居城として受け継がれ、岩城氏の政治・軍事的な拠点として重要な役割を果たしました。しかし、江戸時代に入り、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いの結果、岩城氏は西軍に与したとして改易され、その所領を没収されました。
その後、慶長7年（1602年）に鳥居忠政が10万石で入封し、大館城の新たな城主となります。忠政は徳川幕府の命を受け、大館城の東側に新たな城、後の磐城平城を築城しました。この築城には12年の歳月が費やされ、完成した慶長17年（1612年）頃に鳥居忠政は居城を新しい磐城平城へ移しました。これに伴い、役目を終えた大館城は廃城となりました。
なお、陸奥石川氏や上記の岩城氏の一族である大館氏が、この地名に由来して派生したとも言われています。

現在とアクセス

現在、大館城跡は一部が史跡として整備されています。主郭跡への入口は、福島県道20号（かつての国道6号）の内郷御台境交差点から旧国道49号（現在の市道「御台境町・北好間」線）を北西方向へ進んだ、切り通しの途中に位置しています。付近には湯殿山神社があります。城郭の痕跡はわずかですが、かつてこの地がいわき地方の中心であったことを今に伝えています。

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