天一閣

天一閣の概要

天一閣（てんいつかく）は、中国浙江省寧波市に位置する、明代の蔵書庫であり、現存する最古の書庫として知られています。建設者である范欽は、1532年に進士となり、その後高官に昇進しました。彼は書に対する情熱から、天一閣を『易』の古典の一節に由来して命名しました。この名前は、水と火の対立を象徴しており、書籍を火から守ることを願ったいわくがあります。

天一閣は、地元の人々の憩いの場である月湖の西岸にあり、2018年には中国の5A級観光地に認定されました。現在、この書庫は博物館として一般に公開され、多くの観光客がその貴重な蔵書と歴史的価値を見に訪れます。文化大革命の影響により多くの文化遺産が損なわれましたが、幸運にも天一閣は致命的な損傷を免れることができました。

范欽とその遺産

范欽は蔵書家として著名で、江南地方で第一の蔵書家と称されていました。彼の家訓には、夜間の立ち入り禁止、喫煙や飲酒後の入館禁止、そして女性の立ち入りに関しても厳格な規制が定められていました。このような厳しさから、書庫はあまり人々に開かれていなかったものの、黄宗羲のような著名な文人がその名声を高めに訪れることがありました。天一閣には、全祖望のような在野の学者たちが訪れ、書籍の研究や講義を行う場ともなっていたのです。

その後、蔵書は長い間散逸することなく保存され、清朝の『四庫全書』編纂の際には602種の書籍が寄贈され、473種が記録されました。この功績により、范家は『古今図書集成』の10,000巻を下賜されていますが、貸し出された多くの書籍は返却されなかったとのことです。

建築様式と構造

天一閣は、書庫の前に防火用の池である天一池を備えているのも特徴的です。この池は、東側の月湖から水を引いており、常に豊かな水量を保っています。清代には、蔵書が増えると共に後ろの假山に新たな書庫が建設され、さらなる書籍が納められることとなりました。

天一閣の蔵書リストは、1808年に編纂された『天一閣書目』が参考になります。そこには4,094種の典籍が記録されていますが、明代の戦乱や時代の変化によって蔵書は次第に減少しました。1889年には2,056種まで減少し、1944年の調査では2,500種余りが確認されました。このように、天一閣は単なる書庫ではなく、長い歴史の中で文化を育んできた重要な文化財であることがわかります。

今後も多くの人々に、その価値と魅力が伝えられ、訪問者を迎え入れていくことでしょう。

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