黄宗羲

黄宗羲について

黄宗羲（こう そうぎ、1610年9月24日 - 1695年8月12日）は、中国の明末から清初にかけて活躍した儒学者です。字は「太沖」といい、号は「南雷」や「梨洲」として知られています。彼は紹興府の余姚県の出身で、明の滅亡期には反清運動に参加していましたが、後に故郷での隠居生活に入り、学問に専念しました。黄宗羲は、陽明学の右派に属し、実証的な思想を打ち出し、考証学の祖と評価されています。

経歴

黄宗羲は王陽明と同じ地区に生まれました。彼の父、黄尊素は明末の政治が混乱した時代に東林党の指導者として知られた人物で、1626年に魏忠賢による弾圧に遭い、獄死しました。黄宗羲もまた東林党の理念を引き継ぎ、政治結社である復社に参加。1644年に李自成の反乱によって明が滅亡すると、清の侵攻に対抗するために地元の若者たちを集めて義勇軍を結成しました。彼は清朝に対する抵抗を強化し、1649年には長崎に赴き日本の江戸幕府に援軍の要請を行っています。この出来事は『日本乞師記』にまとめられており、彼の反清運動の一環として重要なものです。

その後、清に取り込まれることになる黄宗羲は、博学鴻詞科に推薦されましたが、それを辞退しました。ただし、清の明史編纂事業には息子の黄百家や弟子の万斯同を派遣し、故郷の人々の歴史を後世に残すための努力をしました。彼は85歳で大往生を遂げました。

著書と思想

黄宗羲は劉宗周という陽明学の著名な学者に師事しました。彼自身も陽明学者として名を馳せますが、明末の左派が陥りやすかった観念論を拒否し、実証的な学問を重んじました。歴史だけでなく、経学や地学、数学などの分野にも広がる学問を体系化し、考証学の重要な存在として位置付けられています。

代表的な著作としては1663年の『明夷待訪録』があります。この書物では、東林党や復社からの影響を受け、国家の理想形を多角的な視点から語りました。黄宗羲は専制政治を批判し、儒教的な思想に基づく国家と人民の正しい関係を論じています。

1676年には『明儒学案』を著し、中国の伝統的な学者たちの思想と批評を整理しました。この書は、中国初の体系的な学術書として評価されています。また、彼は『宋元学案』の執筆をも試みるものの、完成を待たずして亡くなり、後に弟子たちによって補完されました。

他にも『明文海』『明史案』などの著作があり、彼の知識や思考が幅広く記録されています。

後世への影響

『明夷待訪録』は当時の政治状況を背景にした改革案として、厳しい批判を受けました。しかし、皇帝制の全否定には至らず、むしろ君主制の下での改革を訴える内容です。清の乾隆帝による著作の禁書化を受けつつも、清末の革命派によって再評価され、この書物は民衆の革命理念の一部として広まりました。黄宗羲は「中国のルソー」と呼ばれ、後の学生運動や社会変革の活動でも彼の思想が引用されるようになりました。彼の思想は、今なお多くの人々に影響を与えつづけています。

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