天井嘗

天井嘗（てんじょうなめ）について

天井嘗は、日本の妖怪の一つであり、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』に登場します。この妖怪は、長い舌で天井をなめる姿が描かれており、その独特な形状から多くの人々に畏怖の念を抱かせてきました。

概要

天井嘗は『百器徒然袋』に収められている妖怪で、同書は主に『徒然草』の文を引用して構成されています。天井嘗に関する説明文中には、特に『徒然草』の第五十五段から「天井の高きは冬寒く燈（ともしび）暗し」という文章が引用されています。この文によれば、天井が高くて暗い冬の環境が天井嘗の存在と関わっているとされ、石燕はこの状況が妖怪の発生を引き起こすと考えたとされています。

天井嘗のビジュアルデザインは、室町時代の絵巻物『百鬼夜行絵巻』に登場する妖怪に影響を受けており、特に仰向けに顔を向けた妖怪がその原型であると言われています。これは、同じく江戸時代に描かれた妖怪論にも見られる「いそがし」という別名でも知られています。

怪談との関連性

天井に関連する怪談は日本各地に存在し、妖怪研究家の村上健司は、これらの伝承をもとに石燕が天井嘗を創作したのではないかと指摘しています。これにより、天井嘗は日本の文化において独自の位置を占めることになりました。

昭和・平成以降の見解

昭和や平成の時代になると、天井嘗に関する解説はより具体的な内容を持つようになります。長い舌で天井のほこりをなめる妖怪として描かれ、天井や壁に残る「しみ」はその舌跡であると説明されることが一般的です。このため、妖怪の存在を信じる人々の中には、寝る際に天井を見上げたときに、そこに妖怪の形を感じて恐怖を覚えることがあるとされ、最終的には発狂したりして死に至る事例もあると語られています。

民俗学者の藤澤衛彦は、「古屋敷・古堂の天井にしみあるは此怪物の甞（な）めし跡」と述べ、天井嘗が古い家屋における怪異とされる理由を紹介しています。また、山田野理夫の研究では、館林藩の武士が天井嘗を捕まえ、館林城の天井の掃除をさせたという伝説も取り上げられています。しかし、天井嘗は基本的には石燕の創作物であると考えられており、館林城の話もその後のフィクションとして位置づけられていることが指摘されています。

まとめ

天井嘗は、日本の妖怪文化において特異な存在を持っています。その起源や特徴は石燕による創作と、古い伝承の影響が絡み合い、時代を超えて生き残っています。妖怪の形象や怪談が、多くの人々の興味を引き続ける理由は、その神秘性と恐怖感に他なりません。

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