館林城

館林城（たてばやしじょう）

館林城は、現在の群馬県館林市城町に位置していた、戦国時代から江戸時代にかけて存在した日本の城です。別名「尾曳城（おびきじょう）」とも呼ばれ、館林市の指定史跡となっています。

概要

築城時期については諸説ありますが、15世紀に築かれたと考えられています。戦国時代には、上杉氏や北条氏による争奪戦が繰り広げられました。天正年間には、徳川四天王の一人である榊原康政が城主となり、石垣や天守を築き、近世城郭としての姿を整えました。城の周囲には城沼が濠として利用され、本丸を中心に7つの郭が配置された広大な城でした。しかし、現在では、その遺構の一部が残るのみで、跡地には市役所や文化会館などの公共施設が建てられています。

歴史

室町時代

江戸時代に編纂された『館林記』によると、大袋城主であった赤井照光が子狐を助けたところ、親狐が恩返しとして館林城の縄張りを曳いたとされ、それが「尾曳城」の由来になったと伝えられています。弘治2年（1556年）に城が完成したとされています。また、城内には尾曳稲荷神社が祀られていました。

現存する最古の記録では、文明3年（1471年）に、享徳の乱の中で上杉軍が足利成氏方の赤井氏の居城「立林（館林）城」を攻略したことが記されています。

戦国時代

永禄5年（1562年）には、上杉謙信に従う長尾景長によって館林城が落城し、城主の赤井文六は追放されました。その後、長尾景長が城主となりますが、上杉謙信が臼井城の戦いで敗れたことにより、東上野の領主たちは北条氏に寝返り、長尾景長もこれに同調しました。その後、上杉謙信は佐野城を攻め、館林城を広田直繁に与えましたが、後に長尾顕長によって取り戻されました。

天正12年（1584年）には、北条氏照の軍勢が館林領に侵攻し、翌年には長尾顕長が北条氏に服属しました。館林地域は北条氏の直轄領となり、北条氏規が城代を兼務し、南条昌治が城将として支配しました。

天正18年（1590年）の豊臣秀吉による小田原攻めの際、館林城も落城しました。軍記物には石田三成が落としたとありますが、実際には石田三成が忍城を攻撃する前に落城していたことがわかっています。その後、徳川家康の関東入封に伴い、榊原康政が10万石で城主となりました。

江戸時代

江戸時代に入ると、館林は東北方面への要衝として、また、徳川綱吉が将軍になったことから、将軍を輩出した地として重要視されました。江戸幕府の重鎮を務めた七家の居城として栄えました。

かつては、本丸に三重の天守や二重櫓が建ち並んでいましたが、天和3年（1683年）に徳川徳松が急死すると廃藩となり、城も廃城となりました。宝永4年（1707年）に松平清武が入封した際に、規模を縮小して再築され、本丸には天守代わりの二重櫓が建てられました。しかし、1718年には再建費のための増税に苦しんだ農民によって館林騒動が起こりました。

近現代

明治7年（1874年）に城の建物は大部分が焼失しましたが、現在でも本丸や三の丸、稲荷郭などの土塁の一部が残っており、三の丸には土橋門が復元されています。

歴代城主

館林城は、時代によって様々な大名が城主を務めました。

榊原氏：榊原康政から三代続いたが、寛永20年（1643年）に転封。
大給松平家：松平乗寿と乗久が城主を務めた。
館林徳川家：徳川綱吉が将軍となる前に、館林城主となった。
越智松平家：松平清武から武雅までが城主を務めた。
太田氏：太田資晴と資俊が城主を務めた。
越智松平家：松平武元から斉厚までが城主を務めた。
井上氏：井上正春が城主を務めた。
秋元氏：秋元志朝と礼朝が城主を務め、廃藩置県を迎えた。

城の構造

館林城は、城沼を外堀とし、本丸、二の丸、三の丸などの郭を土塁と堀で囲んでいました。城下町も整備され、城を中心に発展していました。

土橋門: 三の丸に設けられた通用門。黒色の鉄板が打ち付けられていたことから「黒門」とも呼ばれた。
千貫門跡: 三の丸の北面にあった正門。渡櫓門で、武士の出入りに使われた。
大手門: 城の正門として、東側の侍屋敷と西側の城下町を隔てていた。

観光

アクセス: 東武鉄道伊勢崎線館林駅から徒歩約15分。
その他: 特に制限なく見学可能。

脚注

[参考文献]
館林市史編さん委員会『館林市史　通史編1　館林の原始古代・中世』館林市、2015年。
館林市史編さん委員会『館林市史　通史編2　近世館林の歴史』館林市、2016年。

[関連項目]
日本の城一覧
館林藩

[外部リンク]
館林城の再建をめざす会
* 館林築城説丸山瓦全、『館林郷土叢書. 第5輯』館林郷土史談館 編 (館林図書館, 1940)

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