天使の微笑・悪魔の涙

宝塚歌劇団 月組公演『天使の微笑・悪魔の涙』

『天使の微笑・悪魔の涙』は、宝塚歌劇団が制作した舞台作品で、小池修一郎氏の宝塚大劇場デビュー作として1989年に月組によって上演されました。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの戯曲『ファウスト』第一部を原案としていますが、結末には大幅な改変が加えられています。形式名は「浪漫歌劇」で、宝塚大劇場公演は全17場です。

上演期間

宝塚大劇場: 1989年11月10日 - 12月19日（新人公演：11月28日）
地方公演: 1990年4月14日 - 4月29日（瀬戸、大津、武蔵野など）
福岡市民会館: 1990年5月1日 - 5月6日
地方公演: 1990年10月13日 - 11月4日（江南、安城、町田など）

解説

19世紀末のウィーンを舞台に、ゲーテの「ファウスト」を基に物語が展開します。老博士ファウストが、悪魔メフィストフェレスと契約し若さを手に入れ、純粋な娘マルガレーテと恋に落ちます。堕天使メフィストフェレスは、人間を堕落させることで天界に戻ろうと目論み、ファウストを標的に選びます。この作品は、小池修一郎氏の大劇場デビュー作として注目されました。

あらすじ

天界でメフィストフェレスは、横恋慕から天使の羽を折ってしまい、地上へ追放されます。人間の魂を救えば天界に戻れるのですが、メフィストフェレスは人間と共に堕落することを選び地上へ。1899年、ウィーンでは、老いた精神医学の研究者ファウスト博士が、大学から名誉教授の称号を授与されます。しかし、学生たちは彼を嘲笑し、学長は煙たがり、未亡人は夫の方が優れていたと考えます。ただ一人、エリザベートの遠縁であるマルガレーテだけが、博士の講演に感銘を受けます。メフィストフェレスは、そんなファウストに目をつけます。

ファウストは、研究に捧げた人生を恨み、メフィストフェレスの誘いに乗り、魂と引き換えに若さを得ます。若返ったファウストは、メフィストフェレスに連れられクラブへ。そこで、マルガレーテの兄フリッツと出会い、彼の恋人であるミッチィを魅了します。一方、マルガレーテは、エリザベート未亡人の世話をしながら、結婚を勧められています。マルガレーテの友人であるマルタは、華やかなマヌカンとして自立しています。

マルガレーテは、庭でファウストと出会い、二人は恋に落ちます。メフィストフェレスの魔力で、マルガレーテとマルタは華やかに着飾り、ファウストと夢のような時間を過ごします。しかし、メフィストフェレスはファウストに未亡人に薬を飲ませるよう指示。マルガレーテは、未亡人に薬を飲ませてしまい、ファウストとの恋に溺れます。ファウストはマルガレーテに結婚を申し込むも、メフィストフェレスは二人を嘲笑います。

未亡人が急病で倒れ、原因は薬物と判明。マルタは、入営することになったフリッツに別れを告げます。ファウストは、マルガレーテとの結婚をフリッツに申し出ますが、フリッツは激怒し、決闘の末に命を落としてしまいます。ファウストは、メフィストフェレスの行為に戸惑いますが、契約通りに事が進んだと告げられます。その後、マルガレーテは兄と伯母を失い孤独に。ファウストは、メフィストフェレスにヴァルプルギスの夜に誘われます。

ファウストは、娼館でマルタと再会。マルガレーテは、精神病院に入院していることを知ります。マルガレーテは、ファウストとの記憶をわずかに取り戻し、二人は再会しますが、メフィストフェレスは二人の復縁を阻止しようとします。ファウストは、メフィストフェレスに魂を渡す決心をしますが、変わらぬ愛を告げるマルガレーテに心が揺らぎます。メフィストフェレスは、ラファエルによって敗北し、ファウストは再び青年の姿に戻り昇天します。

スタッフ

作曲・編曲: 吉崎憲治
編曲: 橋本和明
音楽指揮: 野村陽児
振付: アキコ・カンダ、尚すみれ
装置: 大橋泰弘
衣装: 任田幾英
照明: 勝柴次朗
小道具: 榎本満春
効果: 紙田明
音響監督: 松永浩志
演出助手: 木村信司
舞台進行: 恵見和弘
制作: 飯島健

主な配役 (宝塚)

ファウスト博士／ラファエル(天使): 剣幸（新人公演：久世星佳）
マルガレーテ／アンジェリク(天使): こだま愛（新人公演：紫とも）
メフィストフェレス(堕天使): 涼風真世（新人公演：大海ひろ）
フリッツ(大学生、マルガレーテの兄): 久世星佳（新人公演：真代朋奈）
エリザベート(マルガレーテ兄妹の伯母): 京三紗（新人公演：若菜あん）
マルタ(マルガレーテの親友): 朝凪鈴（新人公演：羽根知里）

漫画版

1999年に漫画家さいとうちほによって漫画化されました。小学館から単行本が発売され、文庫にも収録されています。

スピンオフ

主要人物メフィストフェレスを主役としたスピンオフ作品『ロスト・エンジェル』が、1993年に涼風真世主演で宝塚バウホールで上演されました。作・演出は小池修一郎氏。ミュージカル『エリザベート』の楽曲や多くの洋楽が使用されました。

参考文献

『夢を描いて華やかに -宝塚歌劇80年史-』宝塚歌劇団、1994年
* 『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて（舞台編）』阪急コミュニケーションズ、2014年

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