天図軽便鉄路

天図軽便鉄路の概要

天図軽便鉄路（てんとけいべんてつろ）は、満洲国の吉林省に位置する鉄道路線です。この鉄道は、開山屯駅から老頭溝駅までを結ぶ本線と、朝陽川駅から延吉駅へ向かう支線から構成されていました。建設の背景には、地域の鉱山開発があり、地形的にも厳しい条件があったため、軽便鉄道として設計されました。

歴史的背景

この鉄道の起源は、間島地域における国境紛争「間島問題」に深く関連しています。間島は、中国大陸と朝鮮半島の境界に位置し、歴史的に領有権が両国間で頻繁に移り変わる場所でした。清朝成立後、間島は清の影響下に入りましたが、清末になると開発政策が変わり、国境問題が再燃しました。明治時代以降、日本が朝鮮に進出すると、この地域における利権を巡る争いが激化し、最終的に日中間に「間島協約」が結ばれました。この協約により、鉄道利権の一部が日本側に与えられました。

建設の経緯

1916年、間島地域の開発を目的として「間島軽便鉄道建設期成会」が設立されました。その後、天宝山銀銅鉱の支援により、鉄道の敷設が進められることになります。しかし、計画は中華民国政府の反対に遭い、一度は却下されました。数年の交渉の末、1918年に「天図軽便鉄路」として設立が認可されました。生産物の輸送が主目的であり、特に石炭の輸送が重要視されました。

建設中の反対運動

1899年から1922年にかけて、建設計画には多くの反対運動が起こりました。住民たちは、土地を奪われることや労働条件に不満を持ち、頻繁にデモを行いました。地元での反対運動は次第に大規模になり、政府や警察との衝突も発生しました。これにより、建設が遅れることになります。

開業とその後の運営

1919年からの計画停止命令を受けながらも、1923年に開業しました。開業にあたって、豆満江と龍井村を結ぶ路線が完成し、満洲と朝鮮をつなぐ重要な経路とされました。しかし、鉄道の運営は期待したほど成功せず、経営は厳しい状態が続きました。

経済的困難

経営上の困難は、すぐに表面化しました。鉄道は客足が伸びず、収入は接続する図們鉄道に比べて低迷しました。地域の輸送手段としては従来の牛車や馬車が依然として活発であり、特にコストの面で競争に勝てませんでした。このため、就業者への支払いが遅れ、士気が低下する悪循環に陥りました。

日本の方針と国営化

結局、天図軽便鉄路は日本政府からの援助を受けながらも、1931年に満洲事変が起きた後に国営化されました。これにより、天図軽便鉄路の経営は南満洲鉄道に委託され、その後も利用されることになりますが、重要な位置付けは失われました。

終焉

最終的に、1934年までに全線が廃止されるに至り、天図軽便鉄路は歴史の中で消えていきました。現在では、この鉄道の建設や運営の過程を通じて、日中・日朝の関係、また当時の地域社会の様相を知る貴重な歴史的事例として評価されています。

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