天国の門

映画『天国の門』の概要

『天国の門』（原題: Heaven's Gate）は、1980年に公開されたアメリカ映画で、名監督マイケル・チミノが脚本と監督を務めました。本作は撮影期間の長期化や膨大な予算により、約4400万ドルもの巨額の制作費がかけられた意欲作でありながら、公開当初から批評家や観客からは痛烈な評価を受けました。特に『ニューヨーク・タイムズ』では「災害」と称されるほどでした。この映画は1981年9月26日に日本でも公開されましたが、興行収入は予想を大きく下回り、制作会社は経営危機に直面する事態となります。

あらすじ

物語は1890年代のワイオミング州が舞台です。主人公はエイブリルとアーヴァインという二人の親友で、共に1870年にハーバード大学で学びました。20年後、エイブリルはその地で保安官として働き、小規模な移民牧場を経営するアーヴァインと再会します。アーヴァインは、WASP牧場主たちによる移民たちへの殺戮計画を知り、エイブリルと相談します。物語は、エイブリルの恋人エラと、エラを狙う牧場主の雇われガンマン、ネートとの絡みを通じて展開されます。

実際の事件との比較

本作は実際に起こった「ジョンソン郡戦争」を基にしていますが、映画の中で描かれたような激しい戦闘は実際には発生しませんでした。また、登場人物の名称は実在の人物に基づいていますが、その立場や行動はフィクションです。ジェームズ・エイブリルは本来、保安官ではなく商店の経営者であり、1889年にリンチされる事件に巻き込まれていました。ネイサン・チャンピオンは実際には殺し屋ではなく、農業家畜協会を結成して牧畜業者組合と対立していた人物でした。

制作の経緯

制作段階での予算は当初1100万ドルと設定されていましたが、様々な理由で撮影が繰り返されるうちに、最終的には4400万ドルにまで膨れ上がりました。完成したフィルムは約46万メートルの長さに及び、初版ではなんと5時間30分という長さでした。このため、多くの場面が削除されて219分に短縮されて公開されましたが、評判は散々で1週間で上映が打ち切られました。

映画公開からの評価は低く、興行成績も348万ドルに留まり、莫大な赤字をもたらしました。これにより制作会社ユナイテッド・アーティスツは経営危機に追い込まれ、マスコミにも「天国の門から地獄の門へ」という見出しで取り上げられました。

再評価と近年の状況

公開当初はボロクソに叩かれましたが、数十年が経つにつれて本作の美術や壮大な物語構成が見直され、特にヨーロッパや日本では再評価の兆しが見られています。現在、219分のオリジナル版が主に流通しており、日本でも短縮版の後に長尺版が公開された時期があります。さらに2012年にはディレクターズ・カット版が216分で公開されるなど、作品の価値が見直されています。

監督のマイケル・チミノは、本作後は1985年に『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で復帰しますが、それ以降は運に恵まれない状況が続き、2016年に亡くなるまで大きな成功を収めることはありませんでした。『天国の門』という映画は、一見の価値がある作品で、映画史における重要な位置を占めています。

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