天地返し

天地返し（てんちがえし）

天地返しとは、農業において、耕地の表層（表土）と深層（下層土）を入れ替える農耕技術のことです。具体的には、深く耕し、土壌の上下を反転させる作業を指します。この技術は、土壌の物理性、化学性、生物性を改善し、作物の生育環境を整えることを目的として行われます。

天地返しの効果

1. 耕盤層の破壊と根の伸長促進:
大型機械による耕作は、土壌を踏み固め、耕盤層と呼ばれる硬い層を形成することがあります。耕盤層は作物の根の伸長を阻害し、生育不良の原因となります。天地返しを行うことで、この耕盤層を破壊し、作物が深く根を張れるようにします。

2. 害虫・雑草・病原菌の駆除:
寒冷期に天地返しを行うことで、土壌深層で越冬しようとする害虫、雑草の根、土壌病害の原因となる病原菌を地表に露出させ、寒さで退治する効果が期待できます。これは、農薬の使用量を減らすことにもつながります。

3. 土壌の均一化と栄養分の有効活用:
連作を繰り返すと、堆肥などの有機物が土壌深層に偏って蓄積することがあります。天地返しによって、これらの有機物を表層に移動させ、土壌全体の栄養バランスを均一化することができます。これにより、作物は必要な栄養分を効率的に吸収できるようになります。

4. 連作障害の軽減:
特定の作物を同じ場所で繰り返し栽培すると、土壌中の栄養バランスが偏り、特定の病害虫が発生しやすくなる連作障害が発生することがあります。天地返しは、土壌環境をリフレッシュし、連作障害を軽減する効果が期待できます。

天地返しの歴史

天地返しは、古くから行われてきた農耕技術です。江戸時代の富士山噴火の際には、火山灰によって農作物が育たなくなった地域で、天地返しが行われました。実際にその地域では、土の断面から色の違いによって天地返しが行われたことが確認されています。これは、災害からの復旧手段としても、天地返しが有効であることを示しています。

天地返しの問題点と対策

天地返しは多くの利点がある一方で、注意すべき点もあります。

土壌の栄養バランスの崩れ:
深層の土は、表層の土に比べて栄養分が少ない場合があります。天地返しによって、栄養分の少ない土が表層に出てくることで、作物の生育に必要な栄養分が不足する可能性があります。このため、天地返し後には、肥料を施すなどの対策が必要です。

その他の関連情報

天地返しは、土壌の状態や作物の種類、気候条件などを考慮して、適切な方法で行う必要があります。近年では、不耕起栽培など、土壌を耕さない農法も注目されていますが、天地返しは、土壌改良や病害虫対策など、特定の目的においては依然として有効な手段です。

関連事項:
土壌
連作
除染
災害復旧 - 火山灰など対策
砂漠化 - 砂嵐による浸食、防砂林
* 不耕起栽培

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