天壇

天壇：皇帝が天を祀る聖なる空間

天壇は、中華人民共和国北京市東城区に位置する史跡であり、明朝から清朝にかけて皇帝が天に対して祭祀を行った宗教的な施設です。その広大な敷地は約273ヘクタールにも及びます。

歴史

天壇は、明の永楽18年（1420年）に永楽帝によって建立されました。当初は天地壇と呼ばれていましたが、嘉靖13年（1534年）に天壇と地壇に分離され、現在の天壇となりました。1998年にはユネスコの世界遺産に登録され、2024年7月27日には「北京中軸線：中華の理想的秩序を示す建造物群」の一部として、再び世界遺産に登録されています。また、中国の5A級観光地としても認定されています。

天壇の周辺は天壇公園として整備されており、約3600本のイブキやコノテガシワからなる広大なヒノキ林が広がっています。

構成

天壇は、主に以下の3つの建造物で構成されています。

圜丘壇(muheliyen muhun)

圜丘壇は、皇帝が天を祭るための儀式を執り行う場所です。毎年冬至には豊作を祈る儀式が行われ、雨が少ない年には雨乞いも行われました。天円地方の宇宙観に基づき円形に設計されており、欄干や階段などは陰陽思想における最大の陽数である9や、その倍数で構成されています。各壇の直径を合計すると45丈となり、これは9の倍数であるだけでなく、「九五之尊」という意味も込められています。天壇において、祈年殿が有名ですが、本来最も重要な場所はこの圜丘壇です。

皇穹宇(abkai han i ordo)

皇穹宇は、圜丘で祭事が行われる際に、天の神や歴代皇帝の位牌を安置しておく場所です。「皇」は皇室、「穹」は大空、「宇」は宇宙を意味します。

祈年殿(aniya baire deyen)

祈年殿は、天壇の中でも最も有名な建造物の一つであり、天安門や紫禁城とともに北京のシンボルとして知られています。皇帝が正月に五穀豊穣を祈る儀式が行われました。直径32メートル、高さ38メートルの円形の建物で、25本の柱によって支えられています。現存する中国最大の祭壇建築であり、中国建築史上重要な建造物とされています。木造で、屋根は瑠璃瓦葺きの三層構造になっており、宝頂は金メッキが施されています。明の時代には屋根の色が上から青・黄・緑となっていましたが、1751年に全て青色に変更されました。1889年に落雷によって焼失しましたが、1896年に再建されています。1982年より毎年発行されているパンダ金貨の裏面にも共通して描かれています。

世界遺産としての価値

天壇は、以下の登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) 建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
* (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。

天壇は、中国の伝統的な宇宙観や宗教観を体現した貴重な文化遺産であり、その美しい建築と歴史的価値は世界的に高く評価されています。

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