天平地震

天平地震の概要

天平地震（てんぴょうじしん）は、奈良時代の天平17年4月27日（ユリウス暦745年6月1日、グレゴリオ暦6月5日）に発生したとされる地震です。この地震は美濃国を中心に発生し、甚大な被害を引き起こしました。地震の記録は『続日本紀』に記載されており、地震の強さと影響の大きさを物語っています。

地震の記録と被害

『続日本紀』によれば、この日の夜を通じて地震が続き、その揺れは三日三晩にも及びました。特に美濃国では、国の重要な施設や民間の建物に深刻な被害が発生しました。櫓、館、正倉、仏寺の堂や塔、さらには一般家庭も構造が不安定になり、触れるだけで倒壊する状況に至ったとされています。

この地震の後も、20日間にわたって余震が記録され、地割れや水の湧出といった現象が報告されました。大森房吉（1913）によると、地震発生時には摂津国の難波でも震動が感じられ、余震の記録もここで確認されているとされています。余震の間、各寺院では経典が朗読されるなど、宗教的な対応が行われました。

『熊野年代記』にも、この地震に関する記録が残されており、7日間にわたる大地震があったと伝えています。

地震の規模と地質調査

大森房吉は、摂津における余震が長期間続いたことから、この地震は非常に大きな規模であったと指摘しています。彼は、1891年に発生した濃尾地震と同等か、それ以上であるのではないかと考えています。地質調査所の研究者、須貝俊彦らは、養老山地東縁から桑名市、四日市市を貫く断層帯が745年に活動し、この大地震を引き起こした可能性が高いと報告しています。

地震調査研究推進本部も、養老-桑名-四日市断層帯の最新活動が13世紀以降である可能性を認識しつつ、745年の地震の詳細については史料が不十分であるため、確定的な判断が難しいとしています。また、愛知県文化財センターの調査では、液状化現象による砂脈が奈良時代の地層を引き裂き、平安時代の地層に覆われていることから、天平地震の痕跡ではないかとも考えられています。

震央とマグニチュード

河角廣（1951）は、岐阜市付近に震央を仮定し、その規模をMK = 6と評価。さらにマグニチュードはM = 7.9に換算されるとしています。宇佐美龍夫（2003）も独自に震央を設定し、規模をM ≒ 7.9と評価しています。

歴史的背景

この時期、聖武天皇は遷都を繰り返しており、740年10月末には平城京から恭仁京へ、744年2月末には恭仁京から難波京へ、そして745年の元旦には難波京から紫香楽京へと移された後、本地震の数日後に紫香楽京から平城京へ戻ることとなるなど、政治的にも大きな変動があったようです。そのため、この地震が当時の政局にも影響を与えた可能性があります。

脚注

このように、天平地震は奈良時代の日本において重要な地震の一つであり、当時の社会や文化に多大な影響を及ぼした事象として記憶されています。

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