天徳内裏歌合

天徳内裏歌合の概要

天徳内裏歌合（てんとくだいりうたあわせ）は、960年4月28日（天徳4年3月30日）に、村上天皇の主催で催された歌合です。このイベントは、平安時代の歌の文化を体現するものであり、後世の歌合の模範ともなりました。

準備と進行

歌合が行われるまでの1ヶ月間、緻密な準備がなされました。歌題の提示から衣装、さらには歌が書かれた色紙を置くための州浜（入り江を模した飾り台）に至るまで、細部にわたって計画が練られました。当日の予定は、午後の早い時間から清涼殿の準備が始まりましたが、左方の州浜の到着が遅れたために、歌合が開始された時点ではすでに日が暮れていたとのことです。

歌題は「霞」「鶯」「柳」「桜」「款冬（山吹）」「藤」「暮春」「首夏」「郭公」「卯花」「夏草」「恋」の12題で、それぞれのテーマについて合計20番の歌が詠まれました。判者として、左大臣の藤原実頼が勝敗を決定し、その補佐として大納言の源高明が名を連ねました。また、左右の方に分かれた女房たちがそれぞれ赤（朱）と青（緑）を基調とした衣装を纏い、視覚的にも華やかな演出が施されました。

歌合の結果

歌合は夜通し行われ、左方が10勝5敗5引き分けという結果で終わりました。途中、管弦の遊びも催され、参加者たちはその華やかさを楽しみました。

各歌の内容は次の通りです。いくつかの例を挙げると、霞を題とした歌では、左方の藤原朝忠卿が勝利しました。また、鶯を題とした歌では、左方の源順が見事に勝ちました。数題には持（引き分け）があり、いずれも参加者たちの優れた才能を示していました。

逸話とエピソード

当時の歌合には、いくつかの逸話も残されています。その一つとして、平兼盛が右方の講師として参加した際、三番の鶯の歌を誤って四番の柳の歌を読み上げてしまうという出来事がありました。このミスは左方の方人から指摘され、仕切り直しとなったことにより、源博雅は恥じ入るあまり、顔色を失いながらも再度読み上げることになりました。

また、歌合の最後の勝負では、判者がなかなか勝敗を決められずにいたところ、村上天皇が「しのぶれど」と詠むことで、勝者が右方となる運びとなりました。この瞬間、左右の講師たちは次々に歌を朗読し続け、雰囲気を高めていきました。

平安時代の華やかな文化を色濃く反映した天徳内裏歌合は、ただの歌の競演に留まらず、当時の社会や人々の思いをも感じることができる、重要な歴史的イベントでした。これを機に、歌合は今後も多くの人々に愛され続けていくことになるでしょう。

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