藤原朝忠

藤原朝忠：歌人としての才能と華麗なる経歴、そして知られざる晩年

藤原朝忠（ふじわら の あさただ、910年-967年）は、平安時代中期を代表する公家であり、優れた歌人としても知られています。藤原北家の高藤流に属し、右大臣・藤原定方の五男として生まれました。中納言にまで昇進し、土御門中納言、堤中納言の号で呼ばれた彼は、小倉百人一首や三十六歌仙にも名を連ねるなど、その名は現代にも広く知られています。

華麗なる経歴：

朝忠のキャリアは華々しく幕を開けます。醍醐天皇の治世下では、左近衛将監や東宮侍従を歴任。その後、順調に昇進を重ね、朱雀天皇の即位後は蔵人となり、右兵衛佐や左近衛権少将といった武官の職務も経験しました。承平年間には従五位上に昇進し、天慶年間には正五位下、従四位下へと昇りつめていきます。天慶9年（946年）には近江守として地方官に転出しますが、同年に行われた村上天皇即位の大嘗会では悠紀方（東国）の代表として和歌を奉納し、その功績によって従四位上に叙せられました。

京に戻った朝忠は、天暦5年（951年）に左近衛中将に任ぜられ、翌年には参議に任じられて公卿の地位に昇ります。その後も右衛門督や検非違使別当などを兼務し、天暦10年（956年）には正四位下、応和元年（962年）には造営の功績により従三位に叙せられ、応和3年（963年）にはついに中納言にまで上り詰めました。

歌人としての才能：

朝忠は、優れた歌人としても知られています。『後撰和歌集』をはじめとする勅撰[[和歌集]]に21首もの歌が採録されており、彼の高い才能を証明しています。また、彼自身の歌集『朝忠集』も存在したと伝えられています。特に有名であるのは、小倉百人一首に収録されている次の歌です。

逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし

この歌は、『天徳内裏歌合』において、朝忠が六番勝負で五勝した中の1首として選ばれました。

多才多芸な一面：

歌の才能に加え、朝忠は笛や笙の演奏にも優れていたと伝えられています。これらの才能は、当時の貴族社会において高く評価されたものであり、朝忠の人物像をより豊かに彩るものです。

晩年の逸話：

晩年の朝忠には、興味深い逸話が残されています。彼はかなりの肥満体であったとされ、『古今著聞集』や『宇治拾遺物語』には、医師から水飯を勧められたものの、かえって太ってしまったという話が伝わっています。ただし、これは別の公卿の話と混同されている可能性が高いという指摘もあります。

子孫への影響：

朝忠の娘である藤原穆子は、左大臣源雅信の妻となり、摂政藤原道長の妻である源倫子を生みました。このことから、関白藤原頼通は朝忠の曾孫、後一条天皇と後朱雀天皇は玄孫にあたるとされています。

まとめ：

藤原朝忠は、華麗な経歴、優れた歌の才能、そして多才多芸な一面を持つ人物でした。晩年の逸話も興味深く、彼の生涯は平安時代の貴族社会の一端を垣間見せてくれる貴重な資料となっています。彼の歌は、現代に生きる私たちにも、平安時代の情感を伝えてくれます。

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