源順

源順（みなもと の したごう）は、平安時代中期に活躍した貴族、歌人、そして学者です。嵯峨源氏の流れを汲み、大納言・源定の曾孫にあたります。左馬允・源挙の次男として生まれ、最終的には従五位上・能登守にまで昇進しました。彼は、学問に励み、特に漢詩文と和歌の才能に優れていました。

源順は、若い頃からその博識ぶりで知られており、20代で日本最初の分類体辞典である『和名類聚抄』を編纂しました。これは、事物の項目を見出しとし、出典、意義、和訓などを注釈したもので、日本の辞書史上における重要な文献の一つとされています。この辞典には、多くの和漢の書物が引用されており、中には現在では失われた書物の名前も見られることから、歴史的にも貴重な資料となっています。

また、源順は和歌の才能にも恵まれ、天暦5年（951年）には和歌所の寄人となり、梨壺の五人の一人として『万葉集』の訓点作業や『後撰和歌集』の撰集作業に携わりました。彼は、様々な歌合で判者（審判）を務め、特に斎宮女御・徽子女王とその娘・規子内親王のサロンには親しく出入りしていました。貞元2年（977年）には、斎宮・規子内親王の伊勢国下向にも随行しています。

しかし、彼の多才ぶりは、伝統的な大学寮の紀伝道では十分に評価されなかったようです。文章生に補されたのは、和歌所寄人補任よりも2年後の天暦7年（953年）であり、43歳という遅い時期でした。その後、勘解由判官、民部丞、東宮蔵人を経て、康保3年（966年）に従五位下・下総権守に叙任されましたが、これは遥任でした。

康保4年（967年）には和泉守に任じられましたが、源高明のサロンに出入りしていたことが、安和2年（969年）の安和の変後の官途に影響を与えました。天禄2年（971年）に和泉守を退任した後、天元3年（980年）に能登守に補任されるまで、長い間、官位のない散位の生活を送りました。なお、この間に従五位上に叙せられています。

源順は、三十六歌仙の一人にも数えられ、『拾遺和歌集』以降の勅撰和歌集に51首もの歌が収録されています。彼の和歌を集めた私家集『源順集』には、「あめつちの歌」のように、言葉遊びの技巧を凝らした和歌が数多く収められています。また、『うつほ物語』、『落窪物語』、『篁物語』の作者として擬せられたり、『竹取物語』の作者説の一人にも挙げられたりと、その文才は広く認められていました。

源順は、永観元年（983年）に73歳で亡くなりました。その官歴は、和歌所寄人、文章生、勘解由判官、民部少丞、民部大丞、下総権守、和泉守、そして能登守と多岐に渡ります。彼の残した功績は、日本の歴史と文化に深く刻まれています。

源順の官歴は以下の通りです（日付は旧暦）。

天暦5年（951年）10月：和歌所寄人
天暦7年（953年）10月：文章生
天暦10年（956年）正月27日：勘解由判官
応和2年（962年）正月22日：民部少丞、兼東宮蔵人
応和3年（963年）正月28日：民部大丞
康保3年（966年）正月7日：従五位下（省労）。正月27日：下総権守
康保4年（967年）正月20日：和泉守
天延2年（974年）正月25日：従五位上（治国）
* 天元3年（980年）正月29日：能登守

源順の系譜は、『尊卑分脈』によります。父は源挙、母は不明です。また、生母不明の子女として、男子・源貞がいます。

源順は、その博学と優れた才能により、平安時代を代表する人物の一人として、後世に名を残しています。

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