天文の乱

天文の乱

天文の乱（てんぶんのらん）は、1542年から1548年にかけて、伊達氏当主・伊達稙宗とその嫡男・晴宗との間で起こった内紛です。この争乱は、内紛から始まり、最終的には多くの大名を巻き込む大規模な戦争へと発展しました。この場合、別名「洞の乱（うつろのらん）」とも呼ばれることがあります。

背景

この内乱は、伊達氏の急激な領土拡大に端を発しています。伊達氏の第14代当主である稙宗は、1514年に当主に就任し、家族を近隣大名との婚姻で結びつけることで勢力を強化しました。彼は30年の間に10の郡を支配し、重要な守護職も獲得するほどでした。稙宗がこのように積極的に領土を拡大する一方で、彼は内部の統制を図るための法律や記録を整備し、集権化を進めていきました。

稙宗が婿の相馬顕胤に対して、従属していた相馬旧領を還付しようとしたところで、長男・晴宗が激しく反対してきました。この対立はさらに悪化し、稙宗が三男の時宗丸を上杉家の養子に出すことを考えたことで決定的となりました。晴宗と稙宗の間に生じた亀裂は、越後の内部でも激しい対立を引き起こしました。430年ほどの長尾氏との関係も影響を及ぼし、これに対抗する過程で伊達家の内部は混乱をきたします。

対立の経過

1542年には、晴宗が鷹狩りの帰途に稙宗を捕らえ、西山城に監禁しました。しかし、稙宗の側近によって救出され、自由を取り戻すと、彼は各地の味方に援助を求めたため、この内紛は瞬く間に奥羽の大名達を巻き込みました。序盤は稙宗側優勢だったものの、徐々に情勢は変化し、特に1547年に稙宗側の田村隆顕と蘆名盛氏との間で不和が生じたことから、戦局は晴宗側に流れていきました。

最終的には、1548年9月に天下の将軍、足利義輝が和解を調整し、稙宗が晴宗に家督を譲ることで内乱は終わりを迎えました。しかし、この内戦を受けた混乱の影響は伊達家だけでなく、関係する周囲の大名にも強く及びました。特に、彼らが形成してきた勢力は著しく衰退し、蘆名氏や相馬氏などが独立した勢力として成立することとなりました。

乱の影響

この6年間の争乱は、伊達家の権力を大きく弱体化させました。領主層においても、稙宗を支援していた大名たちの中には、晴宗に反抗し続ける者も多く、伊達家内の混乱は後々まで尾を引くこととなります。また、時宗丸の越後への入嗣案が頓挫したことや、上杉定実の死去に伴う越後氏の断絶も、地域の権力構図に大きな変化をもたらしました。

稙宗の強化された権力も、結局は彼と晴宗の対立とそれに付随する様々な事件によって崩れ去り、最終的には晴宗の後継者である輝宗の代に入ってやっと安定を見せることになります。こうした乱の記憶は、その後の伊達家の歴史において、特に江戸時代の御家騒動などに影響を与え、伊達家の内外において指導者としての晴宗とその周囲が再評価されるまでには長い年月がかかりました。

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