蘆名盛氏

蘆名盛氏

蘆名盛氏（あしな もりうじ）は、戦国時代の陸奥国（現在の福島県）で活躍した武将であり、会津地方を支配した戦国大名・蘆名氏の第16代当主です。その生涯は、勢力拡大と内政改革に彩られていました。

生涯

勢力拡大

1521年、蘆名盛舜の子として生まれた盛氏は、1537年に伊達稙宗の娘を正室に迎え、1541年に家督を継承しました。1542年には山内氏を討伐し、会津における勢力を拡大しました。同時期に発生した伊達氏の天文の乱では、当初は稙宗方についたものの、後に晴宗方に転じ、晴宗方の勝利に貢献しました。

1550年からは、仙道（中通り）への進出を開始し、田村隆顕と激しく争いました。田村氏を支援する佐竹氏の妨害に苦戦しましたが、相模の北条氏康や甲斐の武田信玄と同盟を結び、佐竹氏に対抗しました。これらの戦略的な動きにより、蘆名氏の勢力は大きく拡大しました。

内政改革

盛氏は内政面でも手腕を発揮しました。金山開発に力を入れ、財政基盤を強化しました。また、簗田氏を商人司に起用し、流通支配の強化を図りました。これらの政策により、蘆名氏は経済的にも安定した力を持ちました。

1561年には、庶兄・氏方の謀反を鎮圧し、家督を嫡男・盛興に譲って隠居しましたが、その後も政治・軍事の実権を掌握し、蘆名氏の統制を維持しました。隠居後には止々斎と号しました。

晩年

1563年、須賀川城主・二階堂盛義との戦いを開始しました。盛義は伊達晴宗の娘を娶っていたため、伊達軍が二階堂氏救援のために出兵しましたが、蘆名軍はこれを撃退しました。1566年には、盛義が嫡男・盛隆を人質に出して降伏し、蘆名氏と伊達氏の間で講和が成立しました。

1574年、盛氏は伊達実元と共に田村氏傘下の二本松義国・大内義綱を破り、田村清顕を従属させることに成功しました。しかし、同年6月に家督を継いでいた盛興が急死しました。盛興には男子がいなかったため、盛氏は二階堂盛義の子・盛隆を養子に迎え、家督を継がせました。盛氏は後見人として政務を執りました。

その後も、盛氏は積極的に活動し、1575年には女婿・結城義親を支援して白河結城氏の家督相続問題に介入し、1578年には上杉謙信死後の混乱に乗じて越後に出兵しました。盛氏の治世下で、蘆名氏は最盛期を迎えましたが、晩年には、重臣との不和や戦費の不足により、徐々に力を失っていきました。

1580年、盛氏は60歳でこの世を去りました。

人物・逸話

盛氏は側室を持たず、男子は嫡男の盛興のみでした。これは当時の武将としては珍しく、蘆名家衰退の遠因の一つとも言われています。しかし、その潔癖な性格は「近代的な清潔感がある」と評されています。

晩年には、伊達輝宗から次男を養子にするという申し出があり、これを約束していました。しかし、盛氏の死後、蘆名氏の家臣団がこの約束を拒否したため、伊達氏との関係が悪化し、後に伊達政宗が蘆名氏と戦う一因となりました。

系譜

父：蘆名盛舜
母：金上盛興の娘
兄弟姉妹：蘆名氏方、女子（堀内近胤室）
正室：伊達稙宗の娘
子：蘆名盛興、女子（結城義親室）
養子：蘆名盛隆（二階堂盛義の子）

家臣

松本氏輔
佐瀬種常
富田氏実
富田隆実
平田舜範
慶徳範重
二階堂盛義
金上盛備
猪苗代盛国
猪苗代盛胤
針生盛信

脚注

注釈

出典

参考文献

林哲『会津芦名四代』歴史春秋社、2010年11月。ISBN 978-4-89757-103-4。
阿部猛; 西村圭子 編『戦国人名事典』（コンパクト）新人物往来社、1990年9月。ISBN 4-404-01752-9。
野口信一『会津藩』現代書館〈シリーズ藩物語〉、2005年6月。ISBN 4-7684-7102-1。

関連項目

* 向羽黒山城

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